
タイムスタンプとは?電子帳簿保存法で必要なケースと付与方法を解説
※本記事は2026年7月時点の法令・情報に基づいています。
タイムスタンプは、電子帳簿保存法への対応を進めると必ず名前が挙がる方法です。
ただし、請求書や領収書を電子保存するすべての場面で必須とは限りません。紙をスキャンして保存するのか電子データで受け取ったのか、履歴管理システムや社内規程で代替できるかによって対応は変わります。
本記事では、仕組みや電子署名との違い、付与方法、費用、保存要件を整理し、自社に合う運用を選ぶためのポイントを解説します。

タイムスタンプとは「その時刻にデータが存在したこと」を証明する技術
タイムスタンプとは、電子データが特定の時刻に存在し、その後に書き換えられていないことを確認するための仕組みです。
タイムスタンプを付ける際は、文書の内容からハッシュ値を生成します。ハッシュ値とは、文書の内容を一定の計算方法で変換して作る識別情報です。文書の文字や数字が少しでも変更されるとハッシュ値も変わるため、タイムスタンプ付与時と確認時の値を照合することで、改ざんの有無を確認できます。
生成したハッシュ値を時刻認証局へ送信すると、時刻認証局はハッシュ値に信頼できる時刻情報や電子署名を付けたタイムスタンプトークンを発行します。利用者は、元の文書とタイムスタンプトークンを保存し、必要なときに検証します。
電子帳簿保存法の要件を満たす目的でタイムスタンプを利用する場合は、原則として総務大臣が認定する時刻認証業務に係るタイムスタンプを利用する必要があります。
確認方法 | 特徴 | 証明する力 |
ファイルの作成日時や更新日時 | 端末の設定変更、コピー、保存し直しなどによって変わる場合がある | データがその時刻に存在したことを第三者へ証明しにくい |
タイムスタンプ | 認定された時刻情報とハッシュ値を結び付け、付与後の変更を検証できる | データが認証時刻に存在し、その後に変更されていないことを確認できる |
電子帳簿保存法では、タイムスタンプは紙書類のスキャナ保存や電子取引データの保存で利用されます。ただし、一定の機能を備えたシステムや事務処理規程で対応できる場合もあり、すべての書類に必須ではありません。
タイムスタンプが電子帳簿保存法で必要とされる理由
タイムスタンプが必要とされる理由は、電子データが紙よりも簡単に書き換えられ、見た目では元の内容との違いを判断できないからです。
電子帳簿保存法では、保存した請求書や領収書などが受領時の内容のままであることを説明できるよう、タイムスタンプや履歴管理などを用いた改ざん防止措置を求めています。適切な保存方法を選択し、監査や税務調査に備えましょう。
電子データは痕跡を残さず修正・改ざんできてしまう
電子データは内容を修正しても、紙のように消し跡や書き込みなどの痕跡が残りにくい性質があります。
請求金額や取引日を後から変更して保存しなおしても、見た目だけでは元の内容との違いを判断できません。そのため電子帳簿保存法では、保存したデータが、受領時や作成時の状態から変わっていないことを確認できる仕組みの導入が必要とされています。
タイムスタンプは、データが保存後に修正・改ざんされていないことを示す手段です。請求書などの保存データの真正性を説明する材料になります。
ファイルの作成・更新日時だけでは証明にならない
パソコンに表示される作成日時や更新日時だけでは、データがその時刻に存在していたことを十分に証明できません。
これは端末の時刻設定を変更したり、別の場所へコピーしたり、保存しなおしたりすると、日時が変わることがあるためです。
タイムスタンプでは、第三者機関が信頼できる時刻情報を付けます。自社のパソコンに記録された日時よりも客観性が高く、監査や税務調査でも根拠として示せる情報です。
電子署名との違い|「誰が」を証明する電子署名、「いつ」を証明するタイムスタンプ
電子署名とタイムスタンプは、主に証明する内容が異なります。ただし、電子署名にも署名後の改変を検知する機能があるため、「電子署名は誰だけ、タイムスタンプはいつだけ」と完全に分けられるものではありません。
仕組み | 確認できる内容 | 注意点 |
電子署名 | 誰が署名・承認したか、署名後に変更されていないか | 記録された署名時刻が、第三者によって認証された時刻とは限らない |
タイムスタンプ | 認証された時刻にデータが存在し、その後に変更されていないか | 誰が作成・承認したかまでは特定できない |
電子署名は、署名者や意思表示を確認するとともに、署名後の改変を検知するための方法です。一方、タイムスタンプは、認証された時刻に文書が存在し、その後に変更されていないことを確認するために使います。
電子署名システムに操作時刻や署名時刻が記録される場合でも、その時刻が第三者によって認証された時刻とは限りません。署名者を確認できる電子署名と、認証時刻におけるデータの存在や非改変を確認できるタイムスタンプを組み合わせることで、誰が・何を・いつを一体で説明しやすくなります。
電子署名については以下の記事でも解説しているため、あわせてご覧ください。
関連記事:電子署名とは?仕組みとやり方、導入時の注意点をわかりやすく解説
タイムスタンプの仕組みを3つ解説
タイムスタンプは、文書から作ったハッシュ値に第三者の時刻情報を結び付け、後から改ざんの有無を確かめる技術です。
ここでは、作成から確認までの流れを生成・付与・検証(照合)の3つに分けて解説します。
1. 文書から「ハッシュ値」を生成する
最初に、保存したい請求書や契約書などの電子文書から、ハッシュ値を作ります。
ハッシュ値とは、文書の内容を一定の計算方法で変換して作る識別情報です。元の文書をそのまま外部へ送るのではなく、このハッシュ値を使って手続きを進めます。
文書の文字や数字が少しでも変わると、作られるハッシュ値も変わるため、保存後に内容が書き換えられたかを確認できます。文書ごとに異なる目印を付ける工程と考えると理解しやすいでしょう。
2. 時刻認証局(TSA)が時刻を付与する
次に、作成したハッシュ値を時刻認証局(TSA)へ送信し、時刻情報を付けてもらいます。
時刻認証局は、ハッシュ値に時刻情報や電子署名を加えた「タイムスタンプトークン」を発行します。通常、時刻認証局へ送るのは文書本体ではなくハッシュ値であるため、契約内容や請求金額そのものを送信する必要はありません。
この仕組みにより、社内のパソコンに記録された日時ではなく、第三者が認証した時刻を利用できます。
3. ハッシュ値を照合して改ざんの有無を検証する
保存後に文書が変更されていないか確認するときは、対象文書からもう一度ハッシュ値を生成します。照合先は、タイムスタンプトークンに記録された保存時のハッシュ値です。
両方が一致すれば、タイムスタンプが付けられた時点から文書の内容が変わっていないと判断でき、一致しなければ保存後に修正された可能性があります。
この検証を行えることから、監査や税務調査でも、保存したデータの信頼性を示しやすくなります。
電子帳簿保存法でタイムスタンプが求められる書類と保存方法
タイムスタンプが必要かどうかは、書類の種類ではなく、紙をスキャンしたのか、電子データで受け取ったのかによって異なります。
受け取り方 | 確認する制度 | タイムスタンプの扱い |
紙で受け取りスキャンする | スキャナ保存 | タイムスタンプを付けるか、入力時刻と訂正・削除履歴を確認できるシステムを利用する |
メールやクラウドで受け取る | 電子取引 | 改ざん防止措置の一つ。履歴管理システムや事務処理規程でも対応できる |
タイムスタンプは保存要件の一部であり、検索機能や見読可能性など、ほかの要件も満たす必要があります。
紙の書類をスキャンして保存する場合
紙で受け取った契約書、納品書、請求書、領収書などは、スキャナ保存の要件を満たすことで電子保存できます。
重要書類は、原則として受領または作成後おおむね7営業日以内に入力します。事務処理規程を定めている場合は、最長2か月の業務処理期間が終了した後、おおむね7営業日以内が期限です。
タイムスタンプを使わない場合は、入力期限内に保存した時刻を客観的に確認でき、訂正・削除履歴が残るシステムが必要です。単に履歴が残るだけでは代替要件を満たしません。
また、200dpi以上での読み取り、バージョン管理、検索機能、見読可能性なども必要です。紙の原本は、画像が正しく読み取られ、保存要件を満たしていることを確認してから処分しましょう。
参考:電子帳簿保存法一問一答(スキャナ保存関係)|国税庁 新しいタブで開く
電子データで受け取った場合
メールやクラウドで受け取った請求書、領収書、契約書などは、電子取引データとして保存します。タイムスタンプは必須ではなく、次のいずれかの改ざん防止措置を講じます。
タイムスタンプが付されたデータを受け取る
受領後、期限内にタイムスタンプを付ける
訂正・削除履歴が残る、または訂正・削除できないシステムで授受・保存する
訂正・削除を防止する事務処理規程を定めて運用する
受領後にタイムスタンプを付ける場合は、原則として速やかに付与します。事務処理規程を定めている場合は、最長2か月の業務処理期間が終了した後、おおむね7営業日以内が期限です。
紙へ印刷しただけでは、原則として保存要件を満たしません。元の電子データを検索・表示・ダウンロードできる状態で保存しましょう。
参考:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】|国税庁 新しいタブで開く
2022年施行の改正電子帳簿保存法でタイムスタンプの要件は緩和された
2022年1月に施行された改正により、タイムスタンプに関する要件は実務で対応しやすい内容になりました。
大きな変更点は二つです。一つは、付与の期限が入力期間と同じ扱いになり、最長2ヶ月とおおむね7営業日以内まで延長されたこと。もう一つは、書類を受け取った本人がスキャンする際に必要だった自署が不要になったことです。さらに、タイムスタンプを付けずに運用できる代替措置も認められました。
ただし、要件そのものがなくなったわけではありません。保存したデータを検索でき、画面や書面に表示でき、求められたときに提示できる状態は引き続き保つ必要があります。
電子帳簿保存法については、以下の記事でも解説しているのであわせてご覧ください。
関連記事:電子帳簿保存法とは?義務になる書類と緩和措置をわかりやすく解説
タイムスタンプなしで運用できる2つの代替措置
電子取引データの保存では、タイムスタンプを使わない方法として、履歴管理システムと事務処理規程の2つが認められています。
履歴管理システムは、データの訂正や削除の記録が残る、または訂正や削除ができない仕組みを備えたシステムです。データの授受と保存の両方を同じシステムで行う必要があります。
事務処理規程は、訂正や削除を防ぐための社内ルールで、責任者、保存場所、変更時の手続きなどを定めます。規程を作った後は、実際の運用が手順どおりに行われているかも確認しましょう。
なお、スキャナ保存では事務処理規程による代替は認められていません。タイムスタンプに代えられるのは、入力した時刻を確認できる履歴管理システムを使う方法だけです。
タイムスタンプを付与する3つの方法
タイムスタンプの付与方法は、次の3つです。
システムによる自動付与
無料ツールによる付与
担当者による手動付与
付与方法は、費用だけでなく、対象文書の量、電子帳簿保存法への対応範囲、付与漏れの起こりにくさ、保存や検索まで行えるかを確認して選びます。
ただし、どの方法を選んでも、付与の抜け漏れ、無料ツールを使う場合の情報漏えい、保存後の改ざんといったリスクは残ります。担当者の注意で補い続けるのか、仕組みとして抑えるのかは、自社の文書量と管理体制に応じて判断したいところです。
1. システムで自動付与する
請求書受領、電子契約、会計、文書管理などのシステムのうち、タイムスタンプ付与機能を備えたものでは、文書の受領や契約の完了にあわせて自動付与できます。
認定事業者のなかにはAPIを公開しているところもあり、自社が利用するシステムと連携させて付与の工程を業務フローへ組み込むことも可能です。
文書数が多い企業や複数部署で運用する場合は、担当者の作業を減らしつつ付与漏れも防ぎやすくなります。
2. 無料ツールで付与する|対応範囲と要件を確認
無料で利用できるPDFソフトなどと、タイムスタンプサービスを組み合わせて付与する方法もあります。
ただし、ソフト自体が無料でも、タイムスタンプの発行には別途契約や料金が必要な場合があります。電子帳簿保存法に対応した認定タイムスタンプを利用できるか、検索や保存を別に整える必要があるかを確認しましょう。
文書を外部サーバーへアップロードする場合は、無料・有料を問わず、保存先、保存期間、通信の暗号化、削除方法なども確認が必要です。
3. 手動操作で付与する|付与漏れや運用負荷に注意
手動付与は、担当者がPDFなどのファイルを開き、文書ごとにタイムスタンプを付ける方法です。
認定事業者のなかには、PDFの閲覧ソフトや作成ソフトと組み合わせて使えるサービスを提供しているところもあります。文書数が少なく、重要な書類に絞って確実に付与したい企業には向いています。
一方で、手動付与でもっとも注意したいのは、担当者の判断に依存して付与漏れが起こることです。担当者、期限、保存場所、確認手順まで決めておく必要があり、その分の手間はかかります。
タイムスタンプに関するよくある質問
タイムスタンプの必要性は、保存するファイルの形式だけでは判断できません。
紙をスキャンしたのか、電子データで受け取ったのか、どの保存方法を採用するのかによって対応が変わります。
タイムスタンプの運用について、よくある質問を整理し、次の通りまとめました。
Q1. PDFで保存しておけばタイムスタンプは不要ですか?
PDF形式で保存しただけでは、電子帳簿保存法の要件を満たしたことにはなりません。
PDFには電子署名やタイムスタンプを付けられますが、単にPDFへ変換しただけでは、改ざん防止措置を講じたことにならないためです。
電子取引で受け取ったPDFは、元のデータを保存したうえで、タイムスタンプ、履歴管理システム、事務処理規程などによる改ざん防止措置を講じます。原則として、日付、金額、取引先から検索できる状態も必要です。
なお、基準期間の売上高が5,000万円以下で、税務調査時のダウンロード要求に応じられる場合などは、検索要件が免除されます。ただし、データの保存や改ざん防止措置まで不要になるわけではありません。
Q2. 電子契約サービスを使っていればタイムスタンプ対応は不要ですか?
電子契約サービスを利用していても、電子帳簿保存法の保存要件を満たしているかは別に確認する必要があります。
電子契約サービス側でタイムスタンプが自動付与される場合でも、税務上の保存要件をすべて満たすとは限りません。
契約書を保存期間中に確認できることに加え、原則として日付、金額、取引先などから検索でき、税務調査で求められた際に提示やダウンロードができる状態を整えます。検索要件には、一定の売上高以下でダウンロード要求に応じられる場合などの例外もあります。契約の成立を説明する機能と、税務書類を適切に保存する機能を分けて確認しましょう。
サービスが提供する機能(監査証跡、履歴管理、改ざん防止)と、税務上の保存要件(検索、表示、ダウンロード、保存期間)を分けて確認することで、追加で対応が必要な範囲を特定しやすくなります。
Q3. スキャナ保存すれば紙の原本は破棄できますか?
紙の原本を破棄できるのは、スキャナ保存の要件を満たした状態で保存できている場合です。
単にスマートフォンやスキャナで画像にしただけでは、すぐに原本を捨ててよいとは限りません。契約書、納品書、請求書、領収書などの重要書類では、入力期限、画像の読みやすさ、検索機能、改ざん防止の方法などを確認する必要があります。
タイムスタンプを使わない場合は、入力時刻を客観的に確認でき、訂正や削除の履歴が残るシステムで保存できているかを確かめましょう。
Q4. 認定タイムスタンプと通常のタイムスタンプの違いは?
総務大臣の認定を受けた時刻認証業務で発行されているかどうかが違いです。
認定タイムスタンプは、時刻認証業務の認定に関する規程にもとづいて、総務大臣の認定を受けた時刻認証業務で発行されるものです。以前は民間団体による認定制度でしたが、現在は国の制度へ移行しました。
サービス名にタイムスタンプと付いていても、この認定を受けた時刻認証業務とは限りません。認定状況は変わることがあるため、名称だけで判断せず、最新の「総務大臣認定制度による認定事業者」の一覧で確認しましょう。
参考:一般財団法人日本データ通信協会|総務大臣認定制度による認定事業者 新しいタブで開く
Q5. タイムスタンプに有効期限はありますか?
タイムスタンプに使用される電子証明書には、有効期間があります。ただし、証明書の期限が切れた時点で、過去に付けたタイムスタンプが直ちに無効になるわけではありません。
長期間保存する文書では、発行元、改ざんの有無、使用した暗号技術の安全性などを継続して検証できる状態が必要です。
契約書を長期間保存する場合は、アーカイブタイムスタンプなどの長期保存機能に対応しているかを、サービス提供会社へ確認しましょう。
Q6. タイムスタンプの費用相場はどれくらいですか?
タイムスタンプの費用は、付与回数に応じた従量制、月額や年額の定額制、個別見積りなど、利用方法によってさまざまです。
料金には、初期費用、月額または年額費用、付与回数に応じた従量課金、API連携や長期保存の費用などが含まれる場合があります。料金は変更されることがあるため、最新の公式料金表や見積もりで確認しましょう。
単価だけでなく、受領から保存、検索までを含めた総額で判断することが大切です。
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付与の抜け漏れ、無料ツール利用時の情報漏えい、保存後の変更といったリスクを担当者の運用だけでカバーしようとすると、負担が増えます。契約の送信から署名、履歴の確認までを一つのプラットフォームで扱うことは、履歴管理の属人化を抑える方法の一つです。
Docusign eSignatureは、PKIによる改ざん防止用シール、署名手続きの詳細を確認できる監査証跡、NIST標準に同期したサーバー時刻による操作時刻の記録を利用できます。これらの情報は、契約の経緯や文書の状態を説明する材料になります。
ただし、これらの機能があることだけで、総務大臣の認定を受けた時刻認証業務のタイムスタンプを利用していることや、電子帳簿保存法のすべての要件を満たすことが自動的に証明されるわけではありません。対象書類、検索、表示・ダウンロード、保存期間、利用するプランや連携先の機能を個別に確認しましょう。
個別の税務上の取り扱いは、税務署や税理士などの専門家にご相談ください。プランごとの機能や対応範囲は、Docusignの営業担当またはWebサイトで確認できます。自社の契約件数と保存フローに合う運用を設計しましょう。
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