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【金融機関必見】 2027年4月「犯収法改正」でICチップ認証が必須化。Docusignが実現する、本人確認+契約の完全統合

Author Yuki Okatake
Yuki Okatakeコンテンツマーケティングマネージャー|Docusign Blog 編集担当
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近年、SNS上の「闇バイト」や国際的なマネーロンダリングなど、金融犯罪の手口は高度化・巧妙化の一途をたどっています。このように金融犯罪の手口が高度化する中、2027年4月に施行される「犯罪収益移転防止法(犯収法)」の改正により、金融機関の本人確認(eKYC)は大きな転換点を迎えます。従来の「画像撮影方式」は原則廃止され、「ICチップ読み取り(JPKI等)」への移行が義務付けられます。 本記事では、この法改正が実務に与える影響と、Docusignの最新ソリューション「Docusign ID Veryfication」を活用して、規制対応と顧客体験(UX)向上を同時に実現する方法を解説します。


目次

ICチップ認証が必須化

1. 日本のeKYC強化の背景と犯収法の枠組み

日本では、マネーロンダリング及びテロ資金供与対策(AML/CFT)の観点から、「犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯収法)」により、金融機関や不動産業、士業などの「特定事業者」に対して厳格な取引時確認が義務付けられています。

この規制は、国際的な金融活動作業部会(FATF)の勧告に準拠する形で、年々厳しさを増しています。政府は2016年以降、法改正やガイドライン整備を進め、世界水準のセキュリティ体制構築を目指してきました。

一方で、デジタル化の波に伴い、オンラインで完結する本人確認「eKYC(electronic Know Your Customer)」が急速に普及しました。しかし現在、その手法そのものに大きな見直しが迫られています。これまで主流であった、スマートフォンのカメラで本人確認書類を撮影する手法(いわゆる「ホ方式」)に対し、偽造やディープフェイク技術によるなりすましリスクが懸念され始めたためです。

こうした背景を踏まえ、次章では2025年から2027年にかけて予定されている規制強化(非対面本人確認方式の見直し)について詳しく見ていきます。

【用語解説】

  • 特定事業者:犯収法で本人確認義務が課される事業者。金融機関、宅建業者、貴金属商、士業等

  • AML/CFT:Anti-Money Laundering(マネーロンダリング対策)/Combating the Financing of Terrorism(テロ資金供与対策)

  • FATF:Financial Action Task Force(金融活動作業部会)。マネロン・テロ資金対策の国際基準を策定 

  • JPKI:公的個人認証サービス(Japan Public Key Infrastructure)。マイナンバーカードに格納された電子証明書

2. 2026~2027年に向けたマイナンバーカードIC方式への移行と法改正動向

2026年から2027年にかけて、オンライン本人確認の信頼性を根底から覆す大きな転換点が訪れます。それが、「画像撮影」から「ICチップ読み取り」への原則移行です。

2027年4月施行予定の改正犯収法施行規則などにより、非対面本人確認の手法は大幅に整理・強化されます。 重要なポイントは以下の2点です。

  • 従来型(ホ方式)の厳格化・縮小: 

    • 運転免許証等の「画像」と容貌を照合する従来の手法は、偽造リスクへの脆弱性から要件が厳格化され、利用できるシーンが限定されていく見込みです。

  • ICチップ読み取り(ワ方式/ヘ方式等)への一本化: 

    • ワ方式(旧カ方式相当・JPKI): マイナンバーカードの電子証明書(署名用パスワード等)を使って公的個人認証を行う。

    • ヘ方式(ICチップ情報 + 容貌): ICチップから券面情報(写真など)を読み取り、自撮り写真と照合する。

国家が管理する電子証明書を活用するこの方式は、「誰が・いつ」手続きを行ったかを暗号技術で担保できるため、なりすましが極めて困難です。行政手続きだけでなく民間ビジネスにおいても、本人確認の「正確性」と「信頼性」を担保する唯一無二の手段となりつつあります。 【本人確認方式の比較】

2025年現在と2027年以降の違い 現在主流の「写真撮影方式(ホ方式)」と、今後標準となる「ICチップ読み取り方式(カ方式/JPKI)」を、実務上の重要な観点から比較しました。貴社のシステム選定にお役立てください。

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3. 事業者に求められる実務対応とリスク:「実装」と「体験」の3つの壁

この規制強化の波は、金融業界のほぼ全域に及びます。 犯収法の対象となる「特定事業者」は広範囲にわたりますが、特に今回の「ICチップ読み取り必須化」の影響をダイレクトに受けるのは、非対面取引を主力とする以下の事業者です。

【影響を受ける主な特定事業者】

  • 銀行・金融: 銀行、信用金庫、信用組合、信託会社

  • 証券・投資: 証券会社、FX業者、ファンド運用会社、暗号資産交換業者

  • 保険・貸金: 生命保険会社、損害保険会社、クレジットカード会社、貸金業者

  • 関連士業等: 不動産業者、司法書士、税理士、貴金属取扱事業者など

2027年4月の完全施行を待っていては手遅れです。多くの事業者が2025年現在からシステム移行に着手していますが、現場のシステム担当者やコンプライアンス責任者は、「ICチップ対応」という技術要件が引き起こす、新たな「3つの壁」に直面しています。

1. 開発・運用の「コストの壁」 自社アプリにNFC(近距離無線通信)読み取り機能をゼロから実装し、OSのアップデートごとにメンテナンスし続けるには、膨大な開発リソースとランニングコストが必要です。

 2. 顧客体験の「離脱の壁」 「マイナンバーカードを読み取るために、専用アプリをインストールしてください」という案内は、顧客にとって高いハードルです。面倒な操作を強いることで、口座開設やローン申込の途中離脱(ドロップオフ)が急増するリスクがあります。 

3. データ管理の「分断の壁」 「eKYCツールで本人確認」を行い、その後「別のシステムや紙で契約締結」を行うフローでは、顧客データが分断されます。手作業による突合の手間や、管理コストの増大、さらにはセキュリティリスクの温床となります。

4. 【まもなくリリース】Docusign ID Veryficationが切り拓く、「統合型」実務対応

Docusignは、この大きなトレンドの変化にいち早く対応し、お客様のビジネスを強力に支援します。 電子署名と本人確認をシームレスに統合するソリューション「Docusign ID Veryfication」は、2025年12月中旬、メジャーアップデートを迎えます。

① 改正犯収法(ICチップ読み取り)に完全対応

Docusign ID Veryficationは、新たにマイナンバーカード等のICチップ読み取り機能を搭載しました。 国内最高峰の生体認証技術を持つ株式会社Liquidの技術基盤を採用し、公的個人認証(JPKI/ワ方式相当)やICチップ情報照合(ヘ方式相当)に対応。2027年以降の厳格な規制要件を、開発レスで即座にクリアできます。

② 「本人確認」と「契約」の完全統合(ここが最大の強み)

他社の単体eKYCツールとの決定的な違いは、「本人確認から電子署名までが、同一プラットフォームで完結する」点です。 顧客はスマホ一つで「ICチップによる本人確認」を行い、そのままシームレスに「契約書の署名」へと進めます。プロセスの分断がないため、離脱率を劇的に下げ、成約までのリードタイムを「数日」から「数分」へ短縮します。

【事例】地域金融機関が実現した「数日→数分」の劇的な時間短縮

米国ワシントン州の地域金融機関WSECU(運用資産30億ドル超)は、Docusign eSignatureと ID Veryficationを統合導入し、以下の成果を実現しました。

定量効果

  1. ローン申請処理時間:

    1. 数日〜数週間 → 数分(約99%短縮) 

  2. PADフォーム処理時間:

    1. 24時間 → 4〜6時間(75%短縮)

  3. デジタル化した書類:

    1. 100種類以上

  4. 本人確認:

    1. 知識ベース認証(KBA)を実装し、不正防止を強化

プロセスの変革 

従来は、組合員が支店に出向き、多くの書面に記入し、場合によっては自宅で書類を印刷・スキャンしてメール送付する必要がありました。しかし、DocusignをMeridianLinkのローン審査システムと連携したことで: 

1. 承認後、自動通知が届く

2. スマートフォンでも署名可能

3. 本人確認(Identify)で安全性を担保

4. 店頭でも"その場で完結"する体験を提供

WSECU デジタルシステムアナリストのTyler Baccus氏は、「Docusignは本当に変革的な存在でした。組合員にとって安全で使いやすい体験を作ることができました」と述べています。

事例記事はこちら

WSECUは本人確認手法こそ米国独自のKBA(知識ベース認証)を用いていますが、『本人確認と署名を同一プラットフォームで統合』したことで劇的な成果を上げた好例です。日本のICチップ読み取り運用においても、同様のプロセス改善効果が期待できます。

5. 対応遅れのリスクと準備状況セルフチェック

2027年の完全施行を待たず、競合他社はすでに新方式への移行を進めています。対応が遅れれば、コンプライアンス違反のリスクだけでなく、「セキュリティが脆弱で使いにくい金融機関」として顧客に選ばれなくなる恐れがあります。

【1分でわかる】対応状況セルフチェック 

以下の質問に答えて、貴行・貴社の準備状況を確認してください。

  • ◻︎ 2027年改正における「ホ方式廃止」の影響範囲を把握している

  • ◻︎ 自社システムのICチップ(NFC)読み取り対応の要否を判断済みだ

  • ◻︎ 本人確認後の「契約締結フロー」との連携を考慮している

  • ◻︎ 2026年中のシステム移行に向けた予算・ベンダー選定が進んでいる

👉 チェックが2つ以下の場合、今すぐ対策が必要です。

まとめ:規制対応を「点」で終わらせず、「面」のDXへ

今回の犯収法改正は、古い業務フローを見直すきっかけに過ぎません。金融業界を取り巻く規制トレンドを見れば、マネーロンダリング対策やセキュリティ要件は、今後さらに複雑化・厳格化していくことは確実です。

従来の「身分証のコピー(画像)」や「紙の契約書」といったアナログな手法を残したままでは、データは「非構造化データ」として死蔵され、検索も活用もできないままコンプライアンスコストだけを増大させます。 今求められているのは、単に新しい本人確認ツールを入れることではありません。「本人確認(入り口)」から「契約締結(出口)」までを包括的にデジタル化し、すべてのプロセスを検証可能なデータとして管理する体制です。

本人確認から契約まで一気通貫でデジタル化することは、法規制への即応だけでなく、貴社の契約プロセス全体を「資産」に変える投資となります。 部分的なツール導入ではなく、本人確認と一体となった契約周りの包括的なデジタライゼーション(完全電子化)を、Docusignと共に検討しませんか。

(※本記事の内容は公開日時点の情報に基づいており、法令改正の動向によって変更される可能性があります。最新の規制情報については金融庁や警察庁の公表資料等もご参照ください。)

Docusignの本人確認は新時代へ。 ICチップ対応の最新デモや、導入に関するご相談はこちらからお問い合わせください。問い合わせる

【次回】

「携帯電話業界の本人確認はどう変わる?2026年4月施行の携帯電話不正利用防止法対応ガイド」 2026年4月には、携帯電話不正利用防止法の改正も施行され、通信事業者にもICチップ読み取りが義務化されます。次回の記事では、携帯電話業界特有の課題と対応策を詳しく解説します。

Author Yuki Okatake
Yuki Okatakeコンテンツマーケティングマネージャー|Docusign Blog 編集担当

新卒でSalesforceに入社し、コンテンツ/ブランド/イベントマーケティングに従事。顧客事例やブログの編集、フィールドイベントの設計・運営を担当。2025年よりDocusignでContent Marketing Managerとして、日本市場向けコンテンツの戦略立案・編集・制作(ローカライズ含む)を担い、インテリジェント契約管理(IAM)の価値をわかりやすく発信。

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