
金融リーダーに問う!金融DXを阻む壁はどこにあるのか? - ダークデータの正体を明かし、“攻め”の契約業務へ転換する -
金融業界では、デジタル化の推進が強く求められています。そのカギとなるのが契約業務のデジタル化です。では、契約業務のDXがなぜ最重要課題なのか、その実現にはどんな障壁があるのか。そして、インテリジェント契約管理システム「Docusign IAM」がどう解決できるのか。本記事では、有識者の談話を通じて解き明かしていきます。


金融業界のDXを阻む6つの障壁とは?
多くの業界でDXが進むなか、金融業界においてもDXは避けて通れない経営課題となっています。実際、デジタル化によって顧客との接点においては、サービスの利便性の向上は進みつつあります。オンラインバンキングの普及やキャッシュレス決済の浸透は、その一例といえます。そして、金融業界における次なる成長のカギを握っているのが、AIの活用です。特に生成AIの進化は、金融業務を根本から変えるポテンシャルを秘めています。
しかし、静岡大学 情報学部 教授の遠藤 正之 氏は、「金融DXを推進していくにあたり、さまざまな障壁が立ち塞がっているのも事実です。その障壁は主に6つあります」と訴えます。

1. 紙の資産との共存
長大な歴史を持つ金融機関では、過去に締結した膨大な紙の契約書を管理し続けています。新たなシステムを導入するとき、これらのレガシー資産の維持・統合は大きなハードルとなっています。「実際、すべての業務を一夜にしてデジタルに置き換えることは不可能です」と遠藤氏は強調します
2. 重厚長大なレガシーシステムとコスト
日本の金融機関の基幹系システムは堅牢である反面、維持管理に莫大なコストが発生しています。さらにサイバーセキュリティ対策への投資も考慮に入れなければなりません。近年、「攻めのDX」である新規システム投資や顧客体験向上のための予算確保が難しくなっています。
3. 規制対応とUI/UXの対立
金融商品は厳格な法規制下にあります。そのため、顧客に提示するデジタルの画面上でも、多くの「注意書き」や「免責事項」の表示が求められます。その結果、「読み飛ばされてしまう大量の文字」に画面を占有され、UI/UXが著しく損なわれがちです。遠藤氏は「『顧客中心』よりも、『自社業務の都合』が優先された画面設計がまだ残されているのです」と指摘します。
4. 「二刀流」DX人材の不足
DXの成功には、人材の育成・確保が不可欠です。そして、DX人材にはITスキルだけでなく、複雑な金融規制、銀行特有の業務フローにも理解が求められます。しかし、「ビジネス」と「IT」の両方を理解する人材は稀有で、人材の育成・確保が難しくなっています。
5. 非構造化データの残存
外国為替業務をはじめ、文書が紙のままで情報が電子化されていないケースは少なくありません。また、データ化されてもAIが活用できない「非構造化データ」状態になっているケースも散見されています。「AIを活用するのに、学習元となるデータが整理されておらず、精度の高い分析が困難となっているのです」と遠藤氏は説明します。
6. AI活用のリスクとジレンマ
AIを活用していくには、固有の課題が生じています。例えば、従来型AIの場合、過去のデータを学習します。そのため、過去の融資判断などに含まれていた偏見を継承してしまうリスクがあります 。また、生成AIの活用では、「情報漏えい」と「ハルシネーション(事実に基づかない情報の生成)」のリスクが発生します。
「金融機関では顧客の機密情報を学習データとして外部に出せません。したがって、社内でどこまで生成AIを活用してよいのか。その線引きとガバナンスが定まっていないのが現状です」と遠藤氏は語ります。
アナログのままの契約業務がDX推進を阻害する
金融DXの推進にあたり、特に未整備となっているのが契約業務のデジタル化です。ドキュサイン・ジャパン 取締役社長の竹内 賢佑は、「契約業務において発生するさまざまな情報は、『経営中枢データ』ともいえるものです。しかし、高い価値を持っているにもかかわらず、他のデータに比べて活用されていない現実があります」と語ります。
その理由について、遠藤氏は次のように説明します。
「背景の1つに、根強く残る紙文化があります。住宅ローンなど30年近く続く長期契約や、官公庁への報告義務を有する書類はその一例です。このように依然として紙原本が必須となる領域が存在し、完全なデジタル移行を阻む壁となっています」
また、近年では「ペーパーレス化」が叫ばれ、契約書類がPDF化されるケースも増えています。しかし、金融の現場では「PDFを担当者が印刷し、ハンコを押してFAXで送る」「また別の担当者がスキャンしてメールで送る」など、旧態依然のフローが続いているケースもあります。
「媒体が紙から電子データに変わっただけで、業務フロー自体は完全にアナログのままであるケースが多いのです。稟議プロセスや契約の申し込みなど、人の手が介在すればするほど、スピードは落ちミスやリスクが潜む温床となります。本来ならデジタルで完結できるはずのプロセスまでも、紙の作法に引きずられているのです」と竹内は説明します。

AI活用の障壁となる「ダークデータ」とは?
先述したように、AIを戦略的に活用するためには、AIがそのデータを意味あるデータとして読み取れるようにデータが構造化されている必要があります。しかし、ビジネスの根幹データである契約書が、紙やPDFといった「非構造化データ」のままとなっています。価値を持ちながらも放置され、活用されずに眠っているデータといった「ダークデータ」化し、AI活用のボトルネックになっているのです。
竹内は「この問題は、具体的な経営損失としても現れています。日経BP社と弊社の共同調査によれば、日本企業の約45%が契約プロセスに非効率性を感じ、約32%が契約遅延によるビジネス機会の損失リスクを抱えています。実際、財務部門での収益予測に契約データを活用できていない企業も47%に上る、という報告もあります」と説明します。

「また、契約データがダークデータのままでは、融資やリスク評価における戦略的な意思決定に活用できません。契約書は収益、リスク、義務、権利を定義する中核データです。それにかかわらず、営業部門や法務部門など、部門間の『サイロ化』によって分断されています。これにより、データ駆動型経営の前提が崩れているのです」と竹内は警鐘を鳴らします。
「ほかにも、契約書の準備、締結、その後のデータ活用がそれぞれ異なるツールで行われています。その結果、システムの複雑化とデータの分断を招いています。こうしたこともデータが『死蔵』させ、経営判断やリスク管理に活かすことを困難にしています」(竹内)
契約業務をデジタル化し、プロフィットセンターへ
これまで金融機関の契約業務は、「収益を生まないコストセンター」と言われることもありました。営業部門とは異なり、契約部門は直接的な収益を生まないこと、膨大な契約業務に多くの人的リソースが必要であることなどがその理由です。厳格な審査や法務チェックも、成約を遅らせる「ボトルネック」として捉えられていたことも否めません。契約業務を“コストセンター”から“プロフィットセンター”へ変えていく。そのために、金融機関はどのような取り組みを進めればよいのでしょうか。
そこで最善の手段となるのがデジタル化です。デジタル化により迅速な成約やリスク分析を実現することで、収益力と顧客満足度の向上がもたらされます。しかし、長年にわたって継続してきた契約業務には、独自の慣習や複雑な業務フローが定着しています。それらを一気にデジタル化するのは容易なことではないでしょう。まずは自社の業務を洗い出し、1つひとつ着実にデジタル化を進めていくこと肝要です。
なかでも特に重要となるのが、データの構造化に加え、契約データ活用のロードマップの作成です。
そして、契約データを有効活用するには、部署ごとに存在するシステムに対して、シームレスなデータ連携を実現する必要があります。つまり、契約の準備から締結、保管、活用までを「横串」で通すプラットフォームが不可欠となるのです。
また、単一のプラットフォームに契約の全履歴を「唯一の正解」として集約すれば、最新版のファイルを常に把握できます。転記ミスや、古いファイルに先祖返りするリスクも根絶できます。この揺るぎない正確なデータ基盤が実現されてこそ、ビジネスの成長とガバナンス維持の両立が可能になるのです。
「現在の金融機関では、電子契約サービスをはじめ、CRM、文書管理システムがバラバラに稼働しています。そうした状態から、Docusign IAM(Intelligent Agreement Management)のような統合基盤へ移行することで、契約データがシームレスに流れるようになります。Docusign IAMは、契約書の準備から締結後、そのデータの活用に至るまで、一元化されたプラットフォームで実現できます」と、竹内は話します。
また、近年の契約業務では、取引先の確認だけでなく犯罪収益の移転防止といった厳格なリスク管理も求められています。対して電子署名と連携して本人確認を自動化する「Docusign ID Verification」は、契約に関するリスク検知にAIを活用することを支援します。これにより、金融業界における融資や監査に有効活用できるようになります。
後編では、Docusign IAMやDocusign ID Verificationを活用した具体的な契約業務のDXについて、詳しく解説していきます。


新卒でSalesforceに入社し、コンテンツ/ブランド/イベントマーケティングに従事。顧客事例やブログの編集、フィールドイベントの設計・運営を担当。2025年よりDocusignでContent Marketing Managerとして、日本市場向けコンテンツの戦略立案・編集・制作(ローカライズ含む)を担い、インテリジェント契約管理(IAM)の価値をわかりやすく発信。
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