
“紙の稟議”を超えて─ 金融業界に求められるExplainable Governance(説明可能な統制)とは
金融DXによって紙の稟議からの脱却が進んでいます。一方で、金融機関ではコンプライアンスや文書管理における経営の説明責任が重視され、近年、Explainable Governance(説明可能な統制)に注目が集まっています。本記事では、金融業界の内部統制と金融DXに必要な考え方、そしてDocusign IAMによる統制強化策を解説します。

金融DX推進のベースとなる社内承認プロセスの透明性と迅速化
金融機関では、多くが意思決定の証跡を紙の書類で管理してきました。そのため、稟議書を回覧して承認を得る「紙の稟議」文化が今も残っています。しかし、業務のデジタル化や規制強化の流れにより、近年、社内承認プロセスの透明性と迅速化が求められています。
昨今、AIの判断プロセスを透明化する「Explainable AI(説明可能なAI)」の重要性が叫ばれる中、Docusignは、組織の意思決定プロセスにおいても「Explainable Governance(説明可能な統制)」という視点が不可欠だと考えます。「誰が・いつ・何に基づいて意思決定したのか」を証跡として残し、後から説明できる状態を設計する「Explainable Governance(説明可能な統制)」という企業ガバナンスのあり方は、金融庁や監査法人からの監督・監査に対応するうえでも重要な概念です。
例えば、稟議や決裁が非効率な形で行われていると、統制がとれず大きなコストになりかねません。紙の稟議を超えてExplainable Governanceを実現するために、電子契約の活用と内部統制基盤の見直しが鍵となっています。多くの金融機関ではすでに電子稟議システムが導入されています。しかし、『システム上で承認されたデータ』と『実際に顧客と締結する契約書』が連動しておらず、最終段階で紙やPDFに変換されているケースが少なくありません。例えば、稟議システムでは「金利1.0%」で承認された案件が、手作業での契約書作成時に誤って「0.9%」と記載され、そのまま締結されてしまう──。ここに、承認内容と異なる契約を締結してしまう『統制の空白地帯』が生まれます。
出典:【Docusign公式】稟議と決裁の違いとは?意味・流れ・電子化のメリットをわかりやすく解説 https://www.docusign.com/ja-jp/blog/ringi-and-kessai
紙による承認フローに潜む透明性確保と説明責任への課題
紙の稟議書による承認フローには、非効率性とリスクが潜んでいます。例えば、上司の印鑑が押されていても「誰がいつ承認したのかが記録されていない」、書類の改ざんが発覚しても「履歴が追えない」という問題が生じがちです。
また、紙の書類は回覧中に紛失する恐れもあります。必要な契約書の原本が所在不明になるなど、内部統制上の「穴」になり得ます。こうした状況では、業務の透明性や説明責任を果たせず、統制不備とみなされるリスクも高まります。
近年は、監査法人や取引先などにおける紙文書の管理方法が厳格になっています。紙のまま保管し、アクセス制御や履歴管理ができていない。この状況は、たとえ形式上の手順が合っていても監査では不備と判断されかねません。
内部統制の強化は、規制の観点からも喫緊の課題になっています。金融業界のITガイドライン「FISCの安全対策基準」では、「重要データへのアクセス履歴を取得し、監査証跡として必要期間保管するとともに定期的にチェックすること」が求められています。つまり、「誰がどの情報にアクセス・承認したかログを残し、検証可能にしておくこと」が重要になっているのです。
金融庁も、2020年に書面・押印・対面手続の見直しを提言し、法人取引におけるオンライン手続きの促進に舵を切りました。金融機関には、紙とハンコに頼ったプロセスから脱却し、デジタル化による業務効率化と内部統制強化の両立が求められています。
出典:金融庁 金融業界における書面・押印・対面手続の見直しに向けて https://www.fsa.go.jp/singi/shomen_oin/index.html
Docusign IAMが描く金融業界の統制強化
こうした課題に対するソリューションとして、Docusignでは「Docusign IAM(Intelligent Agreement Management)」の活用を推進しています。Docusign IAMは契約データの統合管理プラットフォームであり、次のようなメリットがあります。
契約データの一元管理
稟議・承認・電子署名の統合
操作ログの自動記録
監査証跡の自動生成
電子署名では、契約締結プロセスの開始から完了まで、あらゆる操作が自動的に記録されます。その結果、「誰がいつ文書に署名・承認したのか」を客観的に証明できる監査証跡を残すことができます。
Docusign IAMの価値は電子署名という単体の機能にとどまりません。社内の既存ワークフロー(稟議システム)とシームレスに連携することで、「稟議で承認された決裁情報」をそのまま「契約書データ」として引き継ぐことが可能です。人手による転記ミスや改ざんの余地をなくし、内部決定から外部締結まで、一気通貫した「説明可能なデータ構造」を構築できます。
Docusign IAMの導入により、承認ログの可視化とトレーサビリティは飛躍的に向上します。契約や稟議のステータスをリアルタイムで可視化できれば、「誰が」・「いつ」・「どの段階で承認したか」を容易に把握できます。あらゆるフローの可視化が進めば、内部統制基盤が整備され、監査において必要な証跡を速やかに抽出できるようになります。
また、役職や担当業務に応じて、契約情報の閲覧・編集・承認などの操作権限が細かく設定可能です。こうした記録はすべて追跡できるため、不正なアクセスや内部不正に即座に対応できます。加えて、操作ログを含む詳細な証跡が残るため、承認プロセスの履歴から、事後の検証にも使えます。
Docusign IAMを有効活用することで、人手に頼った紙の稟議では実現できなかった高度な統制と説明責任が担保されるのです。
出典:サイバーセキュリティと規制コンプライアンスにおける契約管理の役割 https://www.docusign.com/ja-jp/blog/contract-management-for-cybersecurity-and-compliance
意思決定スピードの向上と内部統制の強化がもたらすもの
Docusign IAMの活用で、承認プロセスの所要時間は大幅に短縮され、意思決定における地理的な制約もなくなります。これにより、意思決定のスピードアップと統制強化の両立を果たすことができます。
効果はビジネスの機動力向上だけではありません。システム上には詳細な承認ログと監査証跡が残るため、安定した経営に不可欠な内部監査や外部監査人に対する説明責任も果たしやすくなります。さらに、契約書の改ざん防止やアクセス制御が徹底され、顧客情報の流出リスクを抑え、コンプライアンス遵守にも寄与します。
こうした効果は、金融機関における厳格な契約管理の実現につながります。そして、契約管理業務の飛躍的な効率化を果たし、組織全体のガバナンスを強化します。
契約管理の厳格化がそのまま企業の「説明責任を果たす能力」につながる点は注目すべきポイントです。単に規制対応のための統制ではありません。なぜ、その意思決定に至ったのかをデータに基づき説明できることが、金融機関に対する信頼の礎となります。Docusign IAMを活用した統制基盤の整備は、企業の信用力向上に貢献します。
Explainable Governanceが築く、金融ガバナンスの新たなスタンダード
単に「契約した」という結果だけでなく、その意思決定に至った「プロセス」をデータで証明できること。それが、私たちが考えるExplainable Governanceの本質です。
Docusign IAMは、承認ログの完全な可視化、契約ライフサイクルのトレーサビリティ、そして厳格なアクセス管理を一元的なプラットフォームで実現します。この基盤整備は、透明性の高い内部統制と業務効率の向上を同時に達成するものです。
「説明可能な統制」を備えた組織は、今後ますます厳格化する監督指針や監査要請にも、迅速かつ正確に応えることができます。Docusign IAMによるガバナンスの高度化は、金融業界における揺るぎない信頼基盤を構築する決定的な一歩となるでしょう。

新卒でSalesforceに入社し、コンテンツ/ブランド/イベントマーケティングに従事。顧客事例やブログの編集、フィールドイベントの設計・運営を担当。2025年よりDocusignでContent Marketing Managerとして、日本市場向けコンテンツの戦略立案・編集・制作(ローカライズ含む)を担い、インテリジェント契約管理(IAM)の価値をわかりやすく発信。
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