“ITを活用して不動産業界の質的向上に貢献したい”という思いから1999年に設立され、Webやクラウドなど最先端のテクノロジーを不動産業界向けに提供してきたAPAMANグループ。現在は、日本一の賃貸斡旋店舗数(※1)および91,000戸以上の賃貸管理戸数を誇る「Platform事業」、FC加盟店に対するクラウドシステムやITサービス等のシステム提供を行う「Technology事業」の2つの事業セグメントを柱としています。同グループでは、数年前よりドキュサインの電子署名「DocuSign eSignature」を活用して、入居者、物件オーナー、取引業者との不動産賃貸業務にまつわる文書のペーパーレス化を実現してきました。そして、2022年5月のデジタル改革関連法の施行を受け、Apaman Property株式会社とApaman Network株式会社の両社が協働し、35条書面(重要事項説明)および37条書面(賃貸借契約)の電子化を開始しました。

※1 2021 年11月12日時点:1,043店舗 主要9事業者における店舗数。直営店舗とフランチャイズチェーン加盟店店舗の合計値、海外及び契約店舗を含む。契約店舗とは、出店が確定している店舗、出店準備中店舗を含む。(日本マーケティングリサーチ機構調べ)

2022年5月からの不動産取引の完全電子化を見据えた取り組み

不動産物件の運営管理を担うプロパティマネジメント事業とリーシング事業を展開するApaman Property株式会社は、長年にわたり管理物件の入居申込み手続きなどで「DocuSign eSignature」を利用してきました。同社 経営企画チームの千倉郁明 課長は、その経緯と不動産取引の完全電子化に向けた取り組みについて次のように話します。

「2019年頃までは、当社管理物件の入居申込から審査までの手続きでドキュサインを利用していました。その後も利用範囲を拡大していきながら、昨年8月からは、2022年5月の法改正を見据えて、まずは個人情報取扱いの同意書や入居に関する説明書、またオーナー様との管理契約など宅建業法が関係ない書類で電子署名を利用する取り組みを開始しました」。

一方、賃貸住宅仲介業店舗「アパマンショップ」のフランチャイズ展開や各種システムの開発・運営を行うApaman Network株式会社にて、仲介業者向けの入居申込受付システム「SKIPS」の開発および加盟企業グループ会社への展開を担うシステム本部の主任 大坂淑喜氏は、35条書面と37条書面の電子化への取り組みについて次のように説明します。

「1年ほど前に、SKIPSの中にドキュサインのAPIと連携して電子サインを送ることができるシステム『SKIPS Sign』を構築しました。35条書面と37条書面の電子契約化に向けては、オンライン上で全ての手続きが完結できるよう、このSKIPS Signに埋め込むテンプレートを改修しました」。

テンプレートとは一般的には文書のひな形を意味しますが、ドキュサインの場合、文書のひな形だけでなく、署名の順番やメールの件名・本文、フィールドの配置などの設定情報も保存され、同一または似たような文書を頻繁に送る際に便利な機能です。

SKIPS Signの構築に携わった大坂氏は「ドキュサインは豊富なAPIを提供しているので、必要な情報をすべて取得することができました。また、テンプレートで(文書の)表示/非表示が設定できるので、宅建業法で定められているように、先に重要事項説明を行い、その後、契約書に署名してもらうことができ、完了証明書にも2回に分けて手続きがなされている旨記録されます。そのため、加盟企業にも安心して勧めることができます。設定できるフィールドの数も多く、例えば複数の書類に住所の入力が必要な場合、1度入力すれば他の書類にも自動で反映されるので、署名者の利便性を向上させることができます」とドキュサインについて評価します。

©SKIPSとは
空室確認から内見予約、鍵の手配、入居申込、保証会社等への審査依頼、契約までの賃貸管理・斡旋業務をスマート化するクラウドサービス(SaaS)。これまで電話やFAX、対面、郵送で行っていた業務をオンライン上で完結することができ、業務効率化やお客様の利便性向上に寄与する。

©SKIPS Signとは
SKIPS上から契約書類の電子署名依頼を送信し、契約締結をオンライン上で完結できるサービス。

SKIPS Signを利用した35条書面、37条書面の電子化による効果

デジタル改革関連法の一環として、宅地建物取引業法が改正された2022年5月以降、SKIP Signを利用して35条書面、37条書面の電子化を同グループは開始しました。千倉氏はその効果について「直営店舗では、2022年5月からの3ヶ月間で150件以上(※2)の実績を出しています。以前は紙と電子が混在していて煩雑な面もありましたが、今回の法改正で賃貸借契約の完全電子化が可能になったので、仕組みや手続きの流れに関する店舗からの問い合わせは減りました。その他にも、郵送コストの削減や、これまで契約者に送る書類には書き間違いがないよう記入や署名・押印が必要な箇所に付箋を貼っていましたが、そうした作業が不要になったので、業務効率が改善されました」と評価します。

また、大坂氏は次のように話します。「電子署名サービス単体の場合、通常は加盟企業側で各種設定を行う必要がありますが、SKIPS Signを使えば電子署名が必要な書類をアップロードして、契約者のメールアドレスを登録するだけなので、加盟企業の担当者はワンクリックで簡単に利用することができます。そのため、“契約業務の負担が軽減された”というお声を多くいただいています。それまでは主に駐車場契約で利用されていましたが、35条書面、37条書面でも利用可能になった5月以降は、SKIPS Signを使いたいという加盟企業も増えてきており、この3ヶ月ですでに1割ほどの加盟企業で導入が進んでいます」。

※2 2022年10月末日までで450件を実施(うち直営店舗での実施が350件)

電子契約のさらなる普及に向けた施策と今後の展望

今後に向けた取り組みについて、大坂氏は「効果的に導入してもらえるようにコンサルティングも行っていますので、より迅速にSKIPS Signを導入し、活用してもらえるよう心がけています。現在は約1割の導入実績ですが、これを5割、8割と、より多くの加盟企業に使っていただけるように、啓蒙と改善を続けていきます」と話します。

また千倉氏は「直営店舗の申込みに関しても、電子契約の件数を増やすことはもちろんですが、保証会社や保険の書類などのような複写式の契約書も全て電子化できるように検討しています。さらに、スマホでの見やすさなど、どれだけわかりやすく使えるかを念頭に、テンプレートの設計やフローを改善していきます」と展望を語ります。

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