
Docusignが自社の契約業務をIAMでどう変えたか——営業・法務・調達・人事4部門の導入事例
Docusignは自社のインテリジェント契約管理プラットフォーム(IAM)を、営業・法務・調達・人事の4部門に導入し、契約業務の自動化と可視化を進めています。本記事では、各部門がどのような課題を抱え、IAMでどう解決したかを、具体的な数値とともに紹介します。

契約書は署名した瞬間に「忘れられる」
契約書は、署名された後、紙やPDFのまま放置されることが少なくありません。しかし、その中には価格条件、SLA、更新期限、義務事項など、ビジネス上の重要な情報が詰まっています。
Docusignでは、契約書はあらゆる業務プロセスの接点になっています。見積から入金まで、調達から支払いまで、採用から退職まで——契約書は顧客・パートナー・サプライヤー・従業員・社内システムをつなぐ結節点です。
事業が拡大する中で、Docusign社内でも以下の課題が繰り返し浮上しました。
商談サイクルをどう短縮するか
契約上の義務事項をどう確実に履行するか
コンプライアンスを維持しながら、業務の非効率をどう減らすか
こうした課題に対応するために、Docusignは自社のインテリジェント契約管理プラットフォーム(IAM)を、まず社内の4部門に導入しました。
Docusign IAMの全体像
Docusign IAMは、契約の準備(Create)、締結(Commit)、活用(Manage)の3つのフェーズを一つのプラットフォームでカバーします。
フェーズ | 内容 |
準備(Create) | AIによる契約書の下書き作成、条項ライブラリの活用で、コンプライアンスに準拠した契約書を迅速に作成 |
締結(Commit) | 承認ルートの自動設定と電子署名で、承認の滞留をなくし商談を前に進める |
活用(Manage) | 締結済み契約書を一元管理し、AIで条件や義務事項を可視化。更新期限の見落としや機会損失を防ぐ |
IAMの中核を担うのが、契約分野に特化したAIエンジン「Docusign Iris」です。Irisは2億件以上の契約データを学習しており、静的なPDFに閉じ込められた情報を、検索・分析が可能なデータに変換します。
営業部門:契約書探しから解放され、商談サイクルが20-25%短縮
課題
営業担当者は、契約の更新や追加提案のたびに、Salesforce内の複数の商談レコードや添付ファイルを行き来し、過去の契約書を探す必要がありました。1件あたり約30分を費やしており、その時間は顧客対応に使えていませんでした。
IAMによる解決
昨年、数千件の営業契約書をDocusign Agreement Managerに取り込み、Irisで一括分析して重要な条件を抽出しました。営業担当者は、自然言語で「この顧客のSLA条件は?」と質問するだけで、AIが即座に回答を返します。
成果
商談サイクルが20-25%短縮
営業担当者が契約書を1件ずつ開いて条件を確認する作業がなくなった
アップセルの機会や解約リスクを契約データから把握できるようになった
法務部門:営業契約の交渉期間を大幅に圧縮
課題
営業契約の作成・交渉・管理がすべて法務部門に集中すると、弁護士の負荷が増大し、営業活動が停滞します。法務が「ボトルネック」と見なされる状況が生まれていました。
IAMによる解決
Docusign CLM(契約ライフサイクル管理)をSalesforceと連携させ、営業担当者がSalesforceの画面上で、事前承認済みのテンプレートから契約書を作成・送付できる仕組みを構築しました。条件の変更も、法務が設定した選択肢の範囲内であれば営業担当者自身が対応できます。法務チームの関与は、一定の金額や条件を超える場合にのみ発生する例外ルートに限定しました。
加えて、AIアシストレビューが交渉中の契約書を自社の基準(プレイブック)と照合し、基準から逸脱する条項を自動的に検出します。
成果
基本契約書(MSA)の交渉の95%が5日以内に完了(社内レビューと顧客レビューを含む)
法務チームが審査するMSAの件数が20%以上削減(少額案件の自律化により)
AIを活用した契約書のタグ付けとレビューで、レビュー時間を65%短縮
調達部門:契約書の検索時間を8分から1分未満に
課題
契約更新の交渉前に、過去の割引条件や支払い条件を確認する必要がありますが、契約書が複数のシステムに分散しており、検索に時間がかかっていました。条件を比較する余裕がないまま交渉に臨むと、本来回収できたはずのコスト削減機会を逃すことになります。
IAMによる解決
IAM for Procurementで契約書を一元管理し、Irisが割引条件や支払条件をポートフォリオ横断で可視化する環境を整えました。交渉の場で、過去の条件をリアルタイムに参照できるようになりました。
成果
契約書の検索時間を8分超から1分未満に短縮
交渉に必要な情報を、スプレッドシートに頼らず即座に取得できるようになった
人事部門:派遣スタッフのオンボーディングを自動化
課題
派遣スタッフのオンボーディングでは、調達側で業務委託仕様書(SOW)が承認された後、人事側で別途手続きを進める必要がありました。部門間の手動の引き継ぎが、遅延の原因になっていました。
IAMによる解決
IAMとWorkdayの連携により、調達プラットフォームにSOWが登録された時点で、人事側のオンボーディング手続きが自動的に開始される仕組みを構築しました。
成果
調達と人事の間の手動の引き継ぎが不要に
オンボーディングの開始までの待ち時間が短縮
4部門の導入効果まとめ
部門 | 主な改善指標 |
営業 | 商談サイクル20-25%短縮、契約書検索30分→AIで即時回答 |
法務 | MSA交渉の95%が5日以内完了、法務レビュー件数20%減、レビュー時間65%短縮 |
調達 | 契約書検索8分超→1分未満 |
人事 | 派遣スタッフのオンボーディング自動化、部門間の手動引き継ぎ解消 |
こうした改善を支えているのは、3つの要素です。
契約データの一元管理: 契約書を1つのプラットフォームに集約することで、ボトルネックの特定、更新リスクの管理、条件の分析が可能になる
既存システムとの統合: Salesforce、Workdayなど、各部門がすでに使っているシステムに契約プロセスを埋め込むことで、導入の障壁を下げる
セキュリティとコンプライアンス: 金融、医療、政府機関など、規制の厳しい業界の要件を満たすセキュリティ基盤
あらゆる企業への示唆
Docusignの事例は、自社製品を自社で使った「Docusign on Docusign」の記録ですが、以下の課題は多くの大企業に共通しています。
契約更新の準備に、契約書の検索と条件確認だけで何十分もかかる
営業と法務の間で契約書のやり取りがメールベースで進み、進捗が見えない
調達部門がベンダーとの交渉前に、過去の条件を正確に把握できていない
部門間のオンボーディングや引き継ぎが手動で行われ、遅延が発生している
契約書がSalesforce、ファイルサーバー、メールに分散している
次のステップ
Docusignのインテリジェント契約管理プラットフォーム(IAM)が各部門にもたらす効果について詳しくは、以下をご覧ください。
営業部門での導入事例をさらに詳しく知りたい方は、「Docusignの営業チームが自社のIAMで契約業務を効率化した方法」もあわせてご覧ください。

Docusign IAMは、ビジネスに欠かせない契約プラットフォームです



