デジタルバンキングの最新動向と契約管理業務 顧客中心とした金融サービスの実現のポイント
昨今増えつつあるデジタルバンキング。パーソナライズされていること、リアルタイムであることなど、さまざまな要件が求められる一方で、金融機関もサービスの充実化に備える必要があります。本記事では、顧客が求める契約体験を実現するために、金融機関は契約管理業務をどう最適化すべきかを掘り下げていきます。

増加傾向にあるデジタルバンキング、最新動向を詳しく解説
デジタルバンキングは近年、顧客体験(CX)そのものを一から設計し直す動きへと進化しています。この動きを牽引し、理解するうえで重要なのが、「チャレンジャーバンク」と「ネオバンク」という2つの新しいプレイヤーです。
チャレンジャーバンク
チャレンジャーバンクとは、自ら銀行免許を取得し、テクノロジーを武器に伝統的な銀行市場に挑む新しい銀行を指します。その強みは、レガシーシステムを持たないことによる身軽さと、徹底した顧客中心の設計にあります。店舗を持たず、スマートフォンアプリを主軸に、デジタルネイティブ世代をターゲットとした直感的なUI/UXや、従来の銀行にはなかった柔軟な金融サービス(目的別の貯蓄口座や少額の立替サービスなど)を提供し、新しい顧客層の獲得に成功しています。
ネオバンク
ネオバンクとは、自らは銀行免許を持たず、既存の銀行がAPIを通じて金融機能を提供する「BaaS(Banking as a Service)」基盤を利用し、銀行サービスを提供する事業者です。ネオバンクは、金融事業者でない企業が自社の強力な顧客基盤とブランド、そして既存サービスに金融機能をシームレスに組み込む「エンベデッド・ファイナンス(組込型金融)」戦略をとっています。これにより、顧客の生活の中に溶け込むように金融サービスを提供し、顧客の囲い込みとエンゲージメント強化を図ります。
これらの新しいプレイヤーの登場は、伝統的な銀行に対し、「銀行サービスは、もはや銀行だけが提供するものではない」という現実を突きつけています。この競争環境の変化に対応するため、今後のデジタルバンキングは、次の3つの方向性でさらに進化を加速させていくと考えられるでしょう。
▼デジタルバンキングが歩む3つの方向性とは?
徹底したパーソナライゼーション
顧客の取引履歴やアプリ内の行動データをAIがリアルタイムで分析し、一人ひとりに最適化された金融商品を最適なタイミングで提案します。例えば、「住宅ローン関連のページを閲覧した顧客に、数日後、個別の金利を提示した事前審査承認オファーを送る」といったプロアクティブなアプローチができるようになります。
リアルタイムな取引とサービス
ローン審査や口座開設が数分で完了するなど、あらゆる手続きのスピードが向上します。これは単なる利便性の向上にとどまらず、顧客が「欲しい」と思った瞬間にサービスを提供できるようにすることで、機会損失を防ぎ収益につながるようにします。
モバイルファーストからモバイルオンリーへ
銀行選びの最も重要な基準は、使いやすさや体験の質にあります。スマートフォンアプリがすべてのサービスの入り口となって、日々の生活に溶け込み、毎日でも起動したくなるような、直感的で心地よい操作性が追求されます。
デジタルバンキングの進展が契約管理に与える影響
デジタルバンキングの進化は、金融機関と顧客との「契約」のあり方を根本から変えるほど影響力の大きいものといえます。顧客は他のサービスで体験する「ワンクリック」の利便性を金融にも無意識に期待しており、これまでの契約プロセスからの脱却が余儀なくされています。従来の契約プロセスが抱える課題には、具体的には以下のようなものが挙げられます。
▼契約プロセスの分断と不透明性
Webサイトで申し込んでも最終的には紙の書類が郵送され、返送後は自分の申し込み状況がどの段階にあるのか不透明になりがちです。このような状況は、顧客にストレスを生み出し、不信感につながりかねないリスクをはらみ、離脱の原因にもなり得ます。
▼手作業による非効率さとミスの誘発
顧客がWebフォームに入力した情報を、金融機関側が基幹システムに手作業で再入力するプロセスは、時間がかかるだけでなく、入力ミスのリスクを伴います。ミスが発生すれば、手戻りや顧客への再確認が必要となり、さらに顧客満足度を低下させ、業務コストを増大させます。
▼コンプライアンスとセキュリティのリスク
紙の契約書は、物理的な紛失や情報漏えいのリスクに常にさらされています。また、契約内容のバージョン管理が煩雑になり、誤った書式や情報で契約を締結してしまうといったコンプライアンス上の問題を引き起こす可能性もあります。
これは、金融機関にとって重大な法的・信用のリスクとなります。
デジタルバンキング時代において、契約プロセスは単なる事務手続きではありません。それは、顧客が金融機関のデジタル対応能力を直接的に評価する対象にもなり、顧客体験の質を決定づける重要な要素であるといえます。顧客に与える手続きの煩雑さや遅延は、顧客満足度を著しく低下させます。そして、申し込みの途中離脱、すなわち競合への乗り換えを引き起こす直接的な原因となるのです。
ここまで進んでいる契約業務のデジタル化
デジタルバンキングが求める高度な契約体験を実現するには、個別の業務を個々にデジタル化するだけでは不十分です。
契約書の作成から、金融機関内のレビュー、顧客を含む相手方との交渉、契約の締結(電子署名)、そして締結後の保管・管理に至るまでの一連のライフサイクル全体を、一元的に最適化する「契約ライフサイクル管理(CLM:Contract Lifecycle Management)」のアプローチが不可欠です。
CLMで強力なソリューションとして提供されているのが、「Docusign CLM」です。Docusign CLMは、金融機関のCX向上と業務効率化を両立させるインテリジェントなプラットフォームです。世界中で信頼される電子署名を基盤としながら、その前後の複雑な契約プロセス全体を自動化し、業務効率を飛躍的に高めます。
▼ワークフローの自動化によるプロセス変革:
Docusign CLMでは、直感的なインターフェースで、複雑な契約ワークフローを構築できます。例えば、「顧客のWebサイトの申込情報から契約書を自動作成し、融資額に応じて適切な承認ルートへ自動回付。承認完了後に電子署名を依頼し、締結済み契約書は自動保管される」といった一連の流れを、人の手を介さずに実行することができます。これにより、プロセスの標準化、劇的なスピードアップ、人的ミスの撲滅を同時に実現します。
▼豊富なインテグレーションによる「信頼できる情報源」の確立
金融機関で稼働するSalesforceなどのCRMや基幹システムと、APIを通じて柔軟に連携できます。これにより、システム間にデータが分断されるのを防ぎ、例えば、Salesforce上の顧客情報をワンクリックで契約書に自動入力することが可能です。
二重入力の手間をなくし、すべての契約情報を一元的な「信頼できる唯一の情報源(シングルソース・オブ・トゥルース)」として管理でき、ミスリスクを大きく低減させることができます。
▼金融機関に求められる堅牢なセキュリティとコンプライアンス
Docusign CLMは、契約書という最高レベルの機密情報を扱ううえで、最も高いセキュリティとコンプライアンスを、グローバル基準で提供します。データは通信時も保管時も暗号化され、アクセス権限を詳細に管理できる一元的なリポジトリにすべての契約書を安全に保管。「誰が」「いつ」「何をしたか」という厳格な操作履歴(監査証跡)を記録することで、内部統制の強化と監査対応の効率化に貢献します。
▼AIによるインサイトの抽出と戦略的活用
Docusign CLMは、AIを活用した高度な分析機能を備えています。保管されている膨大な契約書の中から、「リスクの高い表明保証といった特定の条項を含む契約」を瞬時に検索・抽出したり、契約データ全体から「更新期限が近い契約」などをダッシュボードで可視化したりすることができます。これにより、契約書の保管庫が、ビジネス上のリスクや機会をプロアクティブに発見するための「戦略的なデータ資産」に変わり、データに基づいた迅速な意思決定を支援します。
デジタルバンキング競争の焦点は、「価格」はもとより「体験の質」に変わりつつあります。その鍵を握るのが、顧客との重要な接点である「契約プロセス」です。Docusign CLMは、業務効率化とCX向上を両立させ、顧客ロイヤルティの向上に貢献します。今こそ契約管理業務のDX推進に着手すべき時が来ているのではないでしょうか。

Docusign IAMは、ビジネスに欠かせない契約プラットフォームです
