新しい生活様式での働き方とは?変わる日本のビジネス習慣
厚生労働省が発表した「新しい生活様式」。これにより、私たちの働き方はどのように変わっていくのでしょうか。テレワークの導入が一層進むと共に、ローテーション勤務や時差出勤、スーパーフレックス制度、Web会議などが一般的になり、日本のビジネス習慣も大きく変化していくかもしれません。
新型コロナウイルス感染症専門家会議からの提言を踏まえ、厚生労働省が「新しい生活様式」を発表しました。一人ひとりが感染症対策をすることが求められつつ、「働き方の新しいスタイル」も示されています。
「新しい生活様式」および「働き方の新しいスタイル」とはどのようなものであり、私たちは具体的にどんなことを実践していくべきなのか、さらにそれによって変わることが予想されるビジネス習慣について考えたいと思います。
新しい生活様式での「働き方の新しいスタイル」とは?
そもそも「新しい生活様式」とは何でしょうか?
厚生労働省は「新型コロナウイルスに関するQ&A」の中で次のように定義しています。
長期間にわたって感染拡大を防ぐために、飛沫感染や接触感染、さらには近距離での会話への対策を、これまで以上に日常生活に定着させ、持続させなければなりません。それを「新しい生活様式」と呼ぶ。 (問3 新型コロナウイルス感染防止を日常生活に取り入れた「新しい生活様式」とは何ですか。より)
具体的にいつまでとは書かれていませんが、この定義からすると、少なくとも新型コロナウイルス感染症に対するワクチンや治療薬などが認可されて、根本的な治療が可能になるまで続けることが求められると考えられます。
厚生労働省は、「新しい生活様式」の実践例も示しています。これには大きく4項目が挙げられています。
(1)一人ひとりの基本的感染対策
・感染防止の3つの基本「①身体的距離の確保、②マスクの着用、③手洗い」および移動に関する感染対策の具体的項目(感染流行地域を往来しないなど)
(2)日常生活を営む上での基本的生活様式
・手洗い・手指消毒、咳エチケットの徹底・こまめな換気・身体的距離の確保・「3密」の回避など日常生活での具体的注意事項
(3)日常生活の各場面別の生活様式
・買い物・娯楽スポーツ等・公共機関の利用、食事、イベント等への参加に関する具体的項目
(4)働き方の新しいスタイル
・個人・企業・団体等が守るべき5つの項目
※ 業種ごとの感染拡大予防ガイドラインは、関係団体が別途作成
この中で「働き方の新しいスタイル」の5つの項目とは以下の通りです。
テレワークやローテーション勤務
時差通勤でゆったりと
会議はオンライン
オフィスはひろびろと
対面での打合せは換気とマスク
「働き方の新しいスタイル」で何が変わる?
前述した「働き方の新しいスタイル」により、働き方がどのように変わるのか一緒に考えていきましょう。
テレワークやローテーション勤務
テレワークやローテーション勤務を実施すると、同じ時間帯にオフィスに在席・仕事に従事する社員の数は必然的に減ることになります。そうなると、フリーアドレスによるデスクの共用も今以上に盛んになるでしょう。中にはスペースが余ることでオフィスを移転する企業も出てくるかもしれません。業態によってはテレワーク中心となり、オフィス不要論を唱える企業が出てくる可能性もあるでしょう。また、「業務を遂行する場」から「コミュニケーションの場」などといったように、オフィスの意味合いが変わることも考えられます。
時差出勤
時差出勤が当たり前になると、朝礼や定例会議を見直す企業も出てくるでしょう。その場合、迅速且つ効率よくやり取りができるよう、部署やチーム内のコミュニケーション方法を考え直す必要が出てくるかもしれません。オフィスにいればちょっとした質問もすぐに確認することができますが、顔を合わせる機会が減る分、「Slack」や「Chatwork」などのコミュケーションツールを上手く活用することがポイントです。また、フレックス勤務制度がない企業では新たに制度化することが増えるでしょうし、制度があっても形骸化していた企業では活性化することでしょう。最近では、コアタイムの無い「スーパーフレックス制度」を導入する企業も増えているようです。
会議はオンライン
お客様との商談や社内ミーティングは、「Zoom」や「Teams」、「Webex」などのWeb会議システムを活用し、基本的にはオンラインでの打ち合わせや会議が主流になるでしょう。オンラインでは、空気感や雰囲気が伝わりにくいので、資料の作り方にも工夫が必要です。視覚的な情報共有ツールとして、バーチャルホワイトボードを活用している企業もあるようです。また、Web会議でのプレゼンを視覚的に分かりやすくする「mmhmm(ンーフー)」といった仮想カメラアプリも登場しています。
オンラインでお客様と打合せをするのは、以前は「失礼なのでは?」と敬遠される傾向もありましたが、これが主流になると移動時間や旅費を節約できることになり、双方のコスト削減につながることになります。さらに、今まで訪問できなかったお客様へのアクセスが容易になり、商圏が広がる可能性もあります。
Web会議システムと合わせて電子署名ソリューションを取り入れることで、商談後の契約手続きもオンライン上でスムーズに行うことができます。
オフィスは広々と
Web会議が主流になってくると、「音漏れが気になる」「周囲が気になって自席では集中できない」などの声も聞かれるように、個人用のWeb(電話)会議スペースやブースのニーズが増えてくるでしょう。また、「オフィスはひろびろと」に合わせて、オフィスのレイアウトチェンジが必要になります。
対面での打ち合わせは換気とマスク
「対面での打合せは換気とマスク」となると、よほど重要な打合せ以外はオンラインでという傾向に拍車がかかるかもしれません。
以上は一例で、今後様々な働き方の新しいスタイルが生まれてくることでしょう。
変わる日本のビジネス習慣
ここまで「新しい生活様式」の実践例にあった「働き方の新しいスタイル」で、直接的に職場環境や仕事のやり方がどのように変わるかを考えてきました。以下では、それに伴って変化が予想される日本のビジネス習慣について考えていきましょう。
1つ目は、独特なスタイルを持つ日本の名刺交換。新人研修で練習した方も多いのではないでしょうか。これについては、オンラインでの打ち合わせや商談が増えることから、電子名刺での交換がこれからは主流になることでしょう。
電子名刺に関しては、無料のクラウドサービスなどもありますので、今後一気に普及していくことが予想されます。名刺の電子化に伴って名刺情報のデジタル化が進み、個人あるいは各部門がバラバラに保管していた顧客データの全社統合が進むことでしょう。これにより営業活動の効率化や顧客対応の高度化、それに伴う顧客満足度の向上が見込めます。
日本のビジネス習慣としてもう1つ挙げるとすると、書類への押印があります。まず人と人の接触と物のやり取りを減らすことが感染防止につながることから、書類を直接やり取りする行為は減っていくでしょう。さらにテレワークへの対応が求められることから、物理的に印鑑を押すためだけに出社するといった行為も不合理・不経済ということで見直す企業が増えることが予想されます。
先日、政府は「契約書への押印は必ずしも必要ではない(参考:政府と経済団体連携で急激に進む電子契約と電子承認)」との見解を示しましたが、ある日突然「書類に押印するという慣習」がなくなることはないでしょうし、今までのワークフローや書類のフォーマットを変えたくない(または変えるために膨大な労力を要する)という企業も多いことでしょう。そのような場合は、ハンコのデジタル化を進め、電子印鑑を活用することも一つの方法です。
ビジネスにおいて合意や契約、承認といった行為そのものがなくなるわけではありません。不要なワークフローを見直した上で、必要なフローは電子署名ソリューションを活用してデジタル化を進めていくことが重要になってきます。
まとめ
以上、厚生労働省が提示した「新しい生活様式」の中の「働き方の新しいスタイル」に基づいて、これから私たちの働き方がどう変わっていくかについて、またそれに伴って変化するだろう日本ならではのビジネス習慣について考えてみました。
今回取り上げたのは、名刺交換と押印の2つの例のみですが、これら以外にも変化するビジネス習慣が今後出てくるでしょう。いずれにしても、「働き方の新しいスタイル」により企業のデジタルトランスフォーメーションが一層進んでいくことは間違いなさそうです。
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