【2022年1月施行】電子帳簿保存法改正のポイントを解説
2022年1月1日に施行されている改正電子帳簿保存法。本記事では、今回「電子帳簿保存法」が改正される理由や背景、知っておくべき改正のポイント、さらには違反した場合のペナルティについて解説します。業務効率化などのために電子データによる帳簿保存を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
2020年12月21日、閣議決定において「令和3年度税制改正の大綱」が定められました。その中に、国税関係の書類を電子データの方法で保存するための要件を定めた「電子帳簿保存法」について大きな改正点が盛り込まれています。今回の改正電子帳簿保存法は2021年3月31日に公布され、2022年1月1日に施行される予定です。これにより、電子帳簿の保存要件が現行よりも大幅に緩和されるため、多くの企業にとって利用しやすくなるでしょう。
本記事では「電子帳簿保存法」が改正された理由や重要な改正ポイント、さらには違反した場合のペナルティについて解説します。業務効率化などのために電子データによる帳簿保存を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
電子帳簿保存法改正の理由と背景
電子帳簿保存法は1998年に制定された法律で、国税関係の帳簿書類を電子データのかたちで保存するための要件や方法を定めています。IT化やデジタルトランスフォーメーション(DX)が進む現代の経済社会において、すべての帳簿を紙で保存するのは非効率であるため、電子帳簿制度が導入されました。
ただ、従来の電子帳簿保存法における要件は非常に厳格で、企業が実際に利用する際には高いハードルとなっていました。たとえば税務署による事前承認が必要であったり、一定期間は紙の原本を保存し続けなければならなかったりしたため、導入しにくいと感じる企業が多かったのです。
そこで、今回の法改正で要件を大幅に緩和し、より多数の企業が電子帳簿を導入できる状況を目指しています。
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電子帳簿保存法4つの改正ポイント
今回の電子帳簿保存法における改正のポイントとなるのは、以下の4つです。
1. 事前承認制度の廃止
1-1. 現行の要件
現行法では、電子帳簿制度を導入して帳簿を電子化する際には、原則として3ヶ月前までに税務署へ申請し、承認を受けなければなりません(ただし電子取引データ保存だけであれば承認は不要です)。承認を受けるにはシステムの説明書や承認申請書の作成、事務手続き書類の用意などの準備が必要となり、社内決定があってから運用開始までおよそ半年~1年もの期間を要します。
1-2. 法改正後は税務署による承認が不要に
今回の法改正により税務署による事前承認制度が廃止されます。改正法の施行後は、必要とされるスキャナーや会計ソフトなどの機材やツールを揃えて基準を満たせば、すぐに電子帳簿保存を開始できるようになります。
2. タイムスタンプ要件の緩和
タイムスタンプとは、書類が作成された日付を確認するための時刻証明です。
2-1. 現行の要件
税務関係の書類をスキャナーで読み取った場合、受領者が署名した上で「3営業日以内」にタイムスタンプを付与する必要があります。
2-2. 法改正後の対応
改正法により、スキャナーで読み取った際の「署名」は不要となり、タイムスタンプ付与の期間が「最長2ヶ月」へ延長されます。また、電子データの修正や削除のログが残るシステムを使う場合、タイムスタンプ付与自体が不要となってクラウド上での保存も認められるようになります。
3. スキャナー保存における適正事務処理要件の廃止
3-1. 現行法での適正事務処理要件
現行の電子帳簿保存法では、企業が適正に帳簿を保存するため、書類をスキャナーで読み取った電子データで保存する場合には、社内規定を整備して定期検査などの対応を実施する必要があります。これを「適正事務処理要件」といいます。定期検査で紙の原本とデータの突き合わせが必要とされたので、検査日まで紙の原本を保存し続ける必要があります。また、事務処理担当者は「2名以上」とされ、企業の人員を割かれてしまうという課題もあります。
3-2. 法改正後は適正事務処理要件が廃止
適正事務処理要件が廃止され、定期検査まで紙の原本を保存する必要はなくなります。また、事務処理担当者も1名で足りるようになります。
4. 検索要件の緩和
電子帳簿を保存する際には、必要なデータをすぐに取り出せるように検索システムを導入する必要があります。今回の法改正では、その要件も緩和されます。
4-1. 現行の要件
取引年月日や取引金額、勘定科目その他の主要項目をすべて検索条件として設定しなければなりません。日付や金額については「範囲指定」検索が可能でなければならず、2つ以上の項目を組み合わせて検索条件を設定できることも要求されています。
4-2. 法改正後の検索要件
検索の必須項目が「年月日」「金額」「取引先」の3つに削減されます。また、税務署からの電子データのダウンロード要請に対応できるようにしている場合には、「範囲指定」や「項目の組み合わせ」に関する機能は不要となります。なお、売り上げが1,000万円以下でダウンロード対応する場合は、「年月日」等上記3項目による検索機能も不要です。
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不正行為に対するペナルティが強化
今回、電子帳簿保存に関する要件が大幅に緩和されたことで、導入企業が増えると予想されます。それにともない、不正が行われる可能性も増えるため、不正行為に対するペナルティが強化されているので注意が必要です。
具体的には、スキャナーで読み取った電子データや電子取引の電子データを改ざん、隠蔽などして税を逃れるために不正な申告をした場合、通常の重加算税に10%が加算されます。
要件が緩和されて導入しやすくなったとはいえ、不正を行うと重大なペナルティを受けてしまいます。信頼できる専門家の指導に従いながら、適正な方法で電子帳簿頬保存の導入を進めていく必要があると言えるでしょう。
なお、2021年11月にドキュサインが開催したオンライン・イベント『Digital Day 4.0 変化の時代のDX』の中から、SKJ総合税理士事務所 袖山喜久造税理士によるセッションの内容をもとに、電子帳簿保存法の基本的な仕組みや改正法の概要、法令対応及び文書管理の観点から電子契約の導入において検討すべきポイントを以下ブログにて解説しています。イベントの収録動画とあわせてご覧ください。
「改正電子帳簿保存法への対応と文書管理のポイント」を読む →
参考:国税庁 電子帳簿保存法Q&A(一問一答)|国税庁 電子帳簿保存法が改正されました
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