「ABW」とは? 既存のオフィスやテレワークを最適化する新たな働き方のカタチ
ABWとは、Activity Based Working(アクティビティ・ベースド・ワーキング)の略称で、働き手が「いつ・どこで・誰と働くか」を決める働き方のこと。近年、日本企業でも採用され始め、ABWを実現するオフィス作りにも注目が集まっています。今回はABWの概要や効果の他、実際の導入事例について解説します。
政府主導による働き方改革の推進や、新型コロナウイルスの感染拡大などの影響を受け、働き方の多様化が進んでいます。テレワークや在宅勤務など、オフィス以外の場所で就業するスタイルは、今や一般的となりつつあります。そうした中で、現在注目を集めているのが「ABW」という新たな働き方です。ABWはオランダで発祥した働き方で、まだ日本における知名度は高くありませんが、テレワークなどよりも自由度が高く、さまざまな効果を期待できることから、日本企業においても採用され始めています。本記事ではABWの基本的な内容や効果、そして具体的な導入事例までをご紹介します。
新たな働き方「ABW」とは?テレワークとはどう違う?
ABWとは、Activity Based Working(アクティビティ・ベースド・ワーキング)の略称で、働き手それぞれが「いつ・どこで・誰と働くか」を自由に決められる働き方のことです(※1)。
提唱したのは、オランダの総合コンサルティング会社「Veldhoen+Company」。本来、業務はその種類によって適切な就業環境が異なるため、働き手それぞれが働き方を自由に選べるようにすることで、組織の潜在能力を最大化できるとして、ABWの重要性を説いています。例えば、企画書や文書の作成といった集中力を要する業務は、自宅などの静かな場所において一人で取り組むのに適しています。しかし、議論やアイデア出しなどを必要とする業務は、複数名が一カ所で対面して行うのに向いています。
このように、社内の各業務をそれぞれ最適なシチュエーションで行うことで、生産性向上などの効果を狙うのがABWの目的です。つまり、ABWはワークスタイルである一方、働き方を通じた経営戦略でもあるため、その点でテレワークや在宅勤務などと異なります。
自由な働き方が組織の潜在能力を引き出すABWの効果とは
では、ABWは具体的にどのような効果をもたらすのでしょうか。ABWを提唱したコンサルティング会社は、2020年7月に調査レポートを発表しています(※2)。
レポートによると、まず最も大きな効果が得られた項目として「ワークプレイスにおける総合的な満足度」を挙げています。働き方に選択の自由が与えられ、また自らの業務に適した快適な環境で働けることから、職場における満足度が上昇する傾向にあるようです。
また、生産性の向上にもABWは効果を発揮します。レポートでは「個人の生産性」「チームの生産性」ともに上昇しており、特定の職種やポジションに限らず、組織全体での生産性向上を実現できることが分かります。さらに社内のエンゲージメント向上にも有効であり、「組織文化」「帰属意識」といった項目でも、ABWがポジティブな影響を与えていると報告しています。
そのほか、レポートではABWを成功させるポイントとして、「従業員の働き方とワークプレイスの構成が合致していること」を挙げています。つまり、ABWの導入には「従業員の働き方」と「働く環境」がマッチしていることが重要で、勤務制度や就業規則の整備だけではなく、自由な働き方ができる風土の醸成や、オフィス環境づくり、テクノロジーによる業務支援なども必要だと指摘しています。
日本における企業のABWの導入状況
オランダ発の働き方であるABWですが、近年では、日本企業にも徐々に広がりを見せており、ABWの考えをもとにしたオフィスを開設する企業も増えています。その一例が、大手総合不動産会社のA社です(※3)。A社は、2020年春に本社オフィスを移転し、フリーアドレスの自由に働く場所を選べるオフィスを開設。さらに、テレワークを組み合わせ、本社オフィスを「働く場所の選択肢の1つ」として位置付ける、自由度の高い就業環境を構築しました。
新設された本社オフィスは、全5階のフロア。フロア内の壁を取り払い、5フロアを結ぶ内部階段を設けることで、オフィス内を自由に行き来できる空間を作り上げました。さらに、ラウンジやカフェ、イベントが行えるスペースなども設け、従業員のコミュニケーションを促進し、新たな発想やイノベーションが生まれやすい土壌作りを狙っているといいます。
この事例からも分かる通り、「いつ・どこで・誰と働くか」を働き手が決めるABWを実現するためには、まずそうした働き方が可能になるような環境を整えなければなりません。新しい働き方を実践し、その効果を得るためには、既存の業務環境の見直しが求められるようです。
ABWに挑むには、事前の環境整備が必要不可欠
コロナ禍により、テレワークをはじめとした多様な働き方が急速に普及しました。しかし一方で、テレワークの導入で生産性の向上や業務効率化といった効果を得られている企業はそれほど多くないのではないでしょうか。
A社の導入事例からも分かるように、既存の働き方を改善し、従来以上の効果を望むためには、その前提となる業務環境の改善が必要不可欠です。テレワークの効果を実感できていない企業や、テレワークのあり方を改善してABWを実現したい企業は、現在の業務環境を見直してみることをお勧めします。
例えば、紙の契約書や稟議書を介した業務、ハンコの押印による承認作業は、特定の場所や時間に限定されてしまうため、働き方のアップデートを進めるうえで、解消しなければならない問題の1つです。まずは電子署名サービスの導入を検討し、多様な働き方を実現する「第一歩」を踏み出してみてはいかがでしょうか。
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出典:
*1 コクヨ株式会社 働き方用語辞典
*2 株式会社イトーキ 2020年7月15日 Veldhoen + Company、アクティビティ・ベースド・ワーキング(ABW)に関するグローバル調査レポートを発行~30,000件を超えるデータから見えてきた測定可能な効果と成功要因とは~
*3 日経Xトレンド 三井不動産の新オフィス ABWでイノベーション創出狙う(2020年9月29日)
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