スタートアップ投資が活性化!?オープンイノベーション促進税制とは
2020年4月より、オープンイノベーション促進税制が始まりました。これは出資を受ける企業からみれば、資金調達のチャンスを拡げるものであり、逆に出資する側の企業にとっては法人税の節税の策となりうるものです。本記事では投資にかかわる制度の変化とともに、投資にまつわる契約について解説します。
2020年4月より、オープンイノベーション促進税制が始まりました。これは出資を受ける企業からみれば、資金調達のチャンスを拡げるものであり、逆に出資する側の企業にとっては法人税の節税の策となりうるものです。
今回は投資にかかわる制度の変化とともに、投資にまつわる契約の話をみていきましょう。
オープンイノベーション促進税制とは
オープンイノベーション促進税制は、ベンチャー企業やスタートアップへの出資を促進させることを目的とした税制度です。では、なぜ税制によって投資が促進されるのでしょうか。この点を理解するためには、まず法人税の計算方法について、基本的な点を知っておく必要があります。
そもそも企業の法人税は、所得に対して、一定割合で課されるものです。ここでの所得とは、売上などによってもたされる収益から、経費などの費用を引いた差額をいいます。
つまり、できるだけ多くの費用を計上することで、法人税は節税することができるのです。
オープンイノベーション促進税制とは、一定の条件をクリアした場合には、投資金額の25%を所得から控除することを認めるというものです。このようにして将来性のあるベンチャービジネスの成長を促すことを目的としています。そのため、うまく活用すれば、有望な投資先を見つけて節税につなげたい企業にとっても、資金調達を進めたい起業家にとっても、双方にメリットがあります。
オープンイノベーション促進税制の法律上の注意点とは
なお、オープンイノベーション促進税制はベンチャービジネスの成長を促すことが目的であるため、そうした目的に適うよう、認められるには一定の条件をクリアする必要があります。条件として、まず以下のようなものがあることを知っておきましょう。
国内の企業からの出資であること
オープンイノベーション促進税制は、国内の企業からの出資に対して適用されるものです。したがって、外資系企業などは対象外となります。なお、ここでの国内の企業には、国内のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)なども含まれます。
しかし、投資法人などはたとえ国内の法人であっても非該当なので、これには注意しましょう。
出資金額が一定金額以上であること
この制度を活用するには、出資金額が一定以上であることも求められます。この金額の最低ラインは、出資を行う企業の会社規模によって異なりますが、原則は一件あたり一億円以上の出資が条件となっています。しかし、中小企業からの出資である場合はこの要件は緩和されており、一千万円以上の出資で足ります。
出資を受けるスタートアップ企業の側にも条件があること
さらに、出資を受ける側の(ベンチャービジネスなどを立ち上げようとしている)企業にも一定の条件が課せられる点も、あわせて確認が必要な項目となります。たとえば、未上場であることや、設立後10年未満であることなど、当該税制度が対象とするスタートアップ・ベンチャー企業がどのようなものであるかが、具体的な条件として課せられています。
なお、出資を受ける側の企業は必ずしも日本企業である必要はなく、外資系企業でも条件を満たせた適用可能です。ただし当該税制が適用される金額の最低ラインは、日本企業の場合よりも高く設定されています(日本企業であれば原則1億円以上とされるところ、外資系企業では原則5億円以上となっています。)。
このように、投資をする側の法人、投資を受ける側の法人それぞれに法律上の要件が課せられるため、両面から適用される可能性をチェックしていく必要があるといえるでしょう。
資金提供を受ける前に投資契約書を作成しておくメリットとは
なお、こうした税法上の優遇措置を受けるためには、所定様式に基づく申請が必要となります。そのため、単に両当事者の口約束が成立しているだけであったり、資金がただ移動しているだけであったりする場合には、申請を進めるのは困難と考えるべきでしょう。申請にあたっては、あくまで両当事者の間で(貸付などと異なり)投資を行う意図を持っていることが第三者にも確認できるよう、資料等の提出が求められるのが通常です。
このように、投資をする側・受ける側双方の認識を明確にし、事後のトラブルを防ぐ目的で作られる書面は、投資契約書と言われます。
投資を受けるにあたり、あらかじめ投資契約書を作成しておくことは、オープンイノベーション促進税制などの公的な補助・助成・優遇措置を受ける場合はもちろんのこと、ほかにも様々なメリットがあります。
投資する側、投資を受ける側の認識が明確になる
投資を受ける際、もしも契約書が存在しない場合には、たとえ二者間で資金が移動していても、それがどのような意図に基づくものかを第三者が把握することは困難です。
そのため、後でその資金が貸付であったのか、投資であったのかをめぐって争いが起き、そのまま論争が泥沼化してしまうようなリスクもあります。
投資は通常多額の資金の移動を伴うため、後から返金を求められたりするトラブルが起きれば、争いは深刻なものとなる危険があります。合意内容を書面にまとめるほうが安全というべきでしょう。
資本金としての計上が可能になる
また、投資契約によって、それが貸付などと明確に異なるものであり、投資であることを明らかにできれば、提供された資金は根拠をもって資本金として計上することもできます。
貸付であれば負債となるところ、資本金であれば純資産となり、自己資本となるため、両者の意味は会計上も大きく異なります。
資本金の金額の大きさは、企業の社会的な信用度をはかるバロメーターとにもなります。明確な根拠をもって資本金として計上することにより、その後の資金調達が進めやすくなることも考えられます。
投資をする側・受ける側双方の認識を明確にし、合意内容を契約書として文書化することは、事業の成長を願う両者いずれにもメリットがあるのです。
投資契約を電子化・システム化しておくメリットとは
しかし、契約書なしで口頭ベースのやりとりで投資の話が進んでしまい、後々争いになってしまうケースも、現実にはみられます。
投資契約は多くの場合、投資によってこれから事業を作り上げていきたいと考える投資家・事業家の間で締結されるものです。そのため、たとえ契約書の重要性を理解していたとしても、実際には契約書作成といった「後ろ向き」な事柄にコストを割くという発想になりづらく、つい後回しになりがちという事情もあるのではないでしょうか。
こうした課題に対しては、契約にかかわる実務を先にシステム化しておくといった対処法があります。システムに対する投資は組織にとって必ずしも「後ろ向き」なコストではなく、さらなる成長をもたらす推進力に変えることができるからです。
契約事務に限らない一般的な話として、企業で用いられるITシステムは、一度非効率なものが導入されてしまうと、長期的には手間を増やし、結局多額のコストを発生させてしまう傾向があります。たとえ効率的なシステムへの移行を後から目指すとしても、そこではすでに蓄積されたデータを移行するのに大きな手間がかかってしまうのです。また、非効率なシステムのもとでは、本来不要な事務作業や、システム運用・メンテナンスの手間がかさんでしまうこともあります。
一方、まだ管理・保有しているデータがあまり多くない段階であれば、システム化の手間はかなり小さく済む傾向があります。そのため、はじめにシンプルな仕組みを整えておくことが、長期的にはコストの削減につながるのです。
また、これから事業を大きく成長させようと考える場合、事業の成長にも十分に耐えられる強いシステムをあらかじめ導入しておけば、その後のデジタルトランスフォーメーション等への対応も一層容易になります。こうした点は、企業の資産価値にも影響するものでもあり、その後のさらなる資金調達を有利にしてくれることも期待できます。
まとめ
ドキュサインの電子署名は、もちろん投資契約にも対応可能です。取引先によって署名位置や文言に関する微妙な違いをテンプレートで管理できるため、事業の成長とともに複雑化・多様化していく契約実務の内容に柔軟に対応できます。また、世界標準のセキュリティを備えたクラウドサービスなので、場所や時間にとらわれず、いつでもどこでもアクセスすることができ、多忙な事業主にとっての利便性にも優れています。
大きな投資を受ける際には、事業の将来的な成長も見越して、電子契約や電子署名を取り入れ、契約の電子化・システム化を検討してみてはいかがでしょうか。
おすすめ記事:
免責:このサイトの情報は一般的な情報提供のみを目的としています。オープンイノベーション促進税制の適用要件について、実際に適用可能かどうかの個別の判断については、経済産業省や中小企業庁の関連窓口にご確認ください。
関連記事