企業の導入割合は6割超!クラウドサービスの「今」に迫る
ますます普及が進むクラウドサービス。自社でシステムを保有・運用管理する必要がなく、場所や機器を問わず利用可能など、さまざまなメリットがあります。最新の総務省の調査結果によると、実に6割以上の企業がクラウドサービスを導入・活用していますが、実際どのような用途や産業で多く利用されているのでしょうか。
「クラウド」という言葉が世の中にすっかり浸透し、クラウドサービスを活用する企業は右肩上がりに増えています。今回は、現在どのような用途でクラウドサービスが使われているのか、またどんな産業分野で多く利用されているのか、最近の動向を総務省の調査結果(※1)をもとに見ていきます。
今やクラウドの導入企業は6割超
インターネットなどのネットワーク経由でサービスを提供する仕組みであるクラウド。自社でシステムを保有・運用管理する必要がなくなる、場所や機器を問わず利用可能など、さまざまなメリットを得られるため、導入する企業は年々増えています。
クラウドの最近の動向を、総務省の「通信利用動向調査」の最新版(令和元年)をもとに見ていきます。まず、「クラウドサービスの利用状況」を見ると、クラウドサービスを一部でも利用している企業の割合は64.7%です。平成30年の58.7%からさらに増え、6割を超えました。平成27年は44.6%と5割を切っていた状態を振り返ると、ここ数年でさらに導入が進んでいることがわかります。
導入した企業が、何らかの効果が得られたとする割合は85.5%にまでのぼり、多くの企業がクラウドのメリットを享受していることを裏付けています。また、産業別にみると、製造業や運輸業、サービス業といった比較的導入に慎重であった企業での導入割合が平成元年に比べて約5%、平成27年に比べて10~15%増えており、幅広い業種における普及が見受けられます。
「利用しているクラウドサービスの内容」を見ると、「ファイル保管・データ共有」と「電子メール」という2つの用途が最も多く、約半数の企業で利用されています。たとえば、マイクロソフト社の「Microsoft 365」(旧Office 365)やGoogle社の「G Suite」などで、利用した経験がある人も多いのではないでしょうか。さらに社内情報共有・ポータルやスケジュール共有といった用途でも多く活用されています。
バックオフィスでの利用が急伸
ファイル保管・データ共有や電子メール、社内情報共有・ポータルといった用途はもともと多かったのですが、着目すべきは給与/財務会計/人事の利用割合です。電子メールなどに比べるとまだまだ低いものの、平成30年から約5%、平成27年から約10%増えており、他の用途に比べて高い伸び率を見せているのがわかります。
給与/財務会計/人事といったバックオフィスにおけるワークフローなどは、その業務を担うシステムも他の基幹系システムに比べて共通化しやすいと言えます。そのようなシステムはこれまでもERP(Enterprise Resource Planning)といったカテゴリの製品として、多くの企業で長年利用されています。従来、提供形態はオンプレミスが多くを占めていたのですが、近年はクラウド型も多数登場しており、導入する企業も増えています。このような背景が高い伸び率の一因となったと考えられます。
一方、受発注や生産管理をはじめ、バックオフィス以外の業務については、ワークフローにおける業種や企業ごとの差が大きく、共通化してクラウドサービス化するのは簡単ではないこともあり、割合は低い結果となっています。
ただ、アプリケーションは自社で開発(既存パッケージのカスタマイズ含む)するものの、実行環境となるプラットフォーム、もしくはサーバなどのインフラにクラウドサービスを採用するケースは多くあるようです。一般的に前者はPaaS、後者はIaaSと呼ばれています。それに対して、Office 365のようにアプリケーションまでも含むケースはSaaSと呼ばれます。SaaS、PaaS、IaaSを適材適所で使い分けることもポイントの1つです。
身近なあのサービスも実はクラウド
総務省の調査による動向に加えて、私たちの身近なところでは、コロナ禍で利用者が一気に増えたZoomなどのビデオ会議、Slackなどのビジネスチャットといったサービスもクラウドで提供されています。なかには、これらがクラウドベースのサービスであることを意識せずに利用していた人も少なくないでしょう。また、ドキュサインの電子署名ソリューションもクラウド上で提供されており、オンライン上で署名捺印を行い、合意・契約を素早く完了することができます。他にも営業支援システムなど、さまざまなサービスが提供されており、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の一翼を担っています。
そのうえ、日本政府が各府省で政府情報システムを整備するにあたり、クラウドサービスの利用を第一候補として検討するという利用基本方針「クラウド・バイ・デフォルト」を掲げ、「第二期政府共通プラットフォーム」に代表されるような具体的取り組みに注力しているように、民間企業のみならず官公庁も意欲的に取り組んでいます。このようなクラウドへシフトする流れは、今後ますます加速していくと考えられます。
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