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特定商取引法の基礎知識。対象となる取引やガイドラインは?

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特定商取引法とは、訪問販売や通信販売、電話勧誘など消費者トラブルが起こりやすい商取引において、事業者による不正行為を取り締まり、消費者を保護するための法律です。本記事では、特定商取引法の対象となる7つの取引類型と、「クーリング・オフ」など同法が定める規制やルール、ガイドラインを紹介します。

    • 特定商取引法とは?
    • 特定商取引法が定める規制やルール

      目次

      ja-JP
      訪問販売する営業マン

      公開日:2022年5月31日|最終更新:2023年5月1日

      特定商取引法とは、訪問販売や通信販売、電話勧誘など消費者トラブルが起こりやすい商取引において、事業者による不正行為を取り締まり、消費者を保護するための法律です。本記事では、特定商取引法の対象となる7つの取引類型と、同法が定める規制やルールについて解説します。

      特定商取引法とは?

      特定商取引に関する法律(以下、「特定商取引法」)は、消費者と事業者の間でトラブルが起こりやすい「特定の商取引」において、違法・悪質な勧誘行為などを防止し、消費者の利益を守ることを目的として1976年(昭和51年)に制定されました。特定商取引法では、事業者が守るべきルールとともに、申込みや契約を締結した後でも一定期間であれば無条件で撤回や解除ができる「クーリング・オフ」など消費者を守るためのルールが定められています。

      では、ここで言う「特定の商取引」とは、具体的にどのような取引なのでしょうか。特定商取引法で規制の対象となる取引類型は下記の7つになります。

      1. 訪問販売

      消費者の住居に訪問して、商品や権利の販売、役務(サービス)の提供等を行う契約をする取引です。店舗や営業所以外の場所で行われることが要件のため、住居だけでなく喫茶店やホテル等に呼び出しての取引も含まれます。また営業所で行われた契約でも、消費者を営業所へ同行させるキャッチセールスや、販売目的を明らかにせずに消費者を営業所に呼び出して契約等を行うアポイントメントセールスも含まれます。(第2条1項)

      2. 通信販売

      新聞や雑誌、インターネット、ダイレクトメール、チラシ、テレビショッピングなどで事業者が広告し、郵便、電話、インターネット等の通信手段により申込みを受ける取引です(「電話勧誘販売」に該当するものを除きます)。また、ここ数年で増加傾向にある購入型クラウドファンディングも通信販売に該当します。(第2条2項)

      3. 電話勧誘販売

      消費者へ電話で勧誘を行い、申し込みを受ける取引です。その電話の中で消費者からの契約の申込みを受けた場合だけでなく、電話を一旦切った後、郵便、電話等によって消費者が申込みを行った場合でも、電話勧誘によって消費者の購入意思の決定が行われた場合には「電話勧誘販売」に該当します。また、欺瞞的な方法で消費者に電話をかけさせて勧誘した場合も該当します。(第2条3項)

      4. 連鎖販売取引

      いわゆるマルチ商法のことで、個人を販売員として勧誘し、さらにその個人に次の販売員の勧誘をさせ、販売組織を連鎖的に拡大して行う商品・役務の取引を指します。(第33条1項)なお、似たような取引として「ねずみ講(無限連鎖講)」がありますが、大きな違いは連鎖販売取引が商品の販売を目的としているのに対し、ねずみ講は金品の受け渡しを目的とする組織である点です。ねずみ講は法律で禁止されており、懲役や罰金刑の対象となる場合があります。

      5. 特定継続的役務提供

      特定継続的役務提供とは長期・継続的な役務(サービス)を提供する取引のことで、サービスの提供を受ける者の身体の美化、知識・技能の向上等の目的を実現させることを謳い、その目的の実現が確実でないという特徴を持ちます。エステティックサロン、語学教室、美容医療、家庭教師、学習塾、結婚相手紹介サービス、パソコン教室の7つの役務で、政令で定められた期間・金額を超えるものが対象となります。(第41条1項、2項、第12条、第11条1項、第11条2項)

      6. 業務提供誘引販売取引

      「収入が得られる」などといった口実で消費者を勧誘し、仕事に必要であるとして商品や教材等を売って金銭負担を負わせる取引です。例として、「販売されるパソコンとコンピューターソフトを使用して行うホームページ作成の在宅ワーク」や「販売される着物を着用して展示会で接客を行う仕事」があり、仕事のために必要な機材などを購入させる取引がこれに当たります。内職・モニター商法とも呼ばれます。(第51条1項)

      7. 訪問購入

      購入業者が店舗以外の場所、例えば消費者の自宅等を訪問して、物品の購入(買取)を行う取引です。貴金属や不要品等の買い取りサービスが該当します。消費者の居宅以外では、喫茶店や路上、一時的な買取会場等で取引を行う場合も該当します。(第58条の4)

      これら7つの取引に該当する場合には、定められた規制やルールを守る必要があり、違反した場合には取引の取り消しや無効、事業者には罰則が科される場合があります。なお、2022年4月に公表された2021年度の特定商取引法違反に基づく処分件数(業務停止命令、指示、業務禁止命令)は全国で81件あり、行政処分の事例は消費者庁のウェブサイトに掲載されています。

      特定商取引法が定める規制やルール

      次に、特定商取引法が定める規制やルールを見ていきましょう。本章では「行政規制」「民事ルール」それぞれについて代表的なものを紹介します。

      行政規制

      特定商取引法は、対象となる取引について以下のような行政規制を行なっています。違反した場合には業務改善の指示や業務停止命令、業務禁止命令の行政処分、罰則の対象となります。

      ・氏名等の明示義務

      勧誘を開始する前に事業者名や勧誘目的であること、販売/勧誘しようとする商品の内容等を消費者に告げることを義務付けています。

      ・不当な勧誘行為の禁止

      価格や支払い条件等について虚偽の説明をしたり、故意に告知しなかったり、また消費者を威迫して困惑させたりする勧誘行為は禁止されています。

      ・広告の規制

      事業者が広告をする際には、重要事項を表示することを義務付け、虚偽・誇大な広告を禁止しています。例えば、通信販売においては、販売価格(送料を含む)、支払い時期と方法など、14の事項を広告に表示することを義務づけています(第11条)。

      ・書面交付義務

      現在、契約締結時に重要事項を記載した書面(契約書等)を交付することを義務付けられていますが、改正法により、2023年6月1日以降はメールなどの電磁的方法で提供することが可能となります。詳しくは『特商法の改正による契約書面等の電子化のポイント』をご覧ください。

      民事ルール

      特定商取引法は、消費者と事業者との間のトラブルを防止し、消費者を救済するために、以下のような民事ルールを定めています。

      ・クーリング・オフ

      クーリング・オフは、申し込みや契約の後、書面を受け取ってから一定期間内であれば、無条件で解約することができる制度です。期間は取引によって異なり、訪問販売・電話勧誘販売・特定継続的役務提供・訪問購入では8日間、連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引では20日間です。なお、通信販売にはクーリング・オフに関する規定はありません。

      ・意思表示の取消

      事業者が虚偽の告知をしたり、故意に重要事項を告知しなかった結果、消費者が誤認して申し込みや承諾の意思表示をしたときには、消費者はその意思表示を取り消すことができます。

      ・損害賠償等の額の制限

      消費者が契約を中途で解約する際、事業者が消費者に請求できる損害賠償額に上限が設定されています。

      上記のほか、2021年に公布された改正法により、送り付け商法(ネガティブ・オプション)に関する規定もあります。2021年7月6日以降、身に覚えのない商品(売買契約をしていない商品)が届いた場合、消費者は事業者から代金を請求されても支払う必要はなく、すぐに商品を処分することができます。その他の改正内容としては、詐欺的な定期購入商法への対策やクーリング・オフ通知の電子化、電磁的方法での契約書面等の交付などがあります。詳細は『【2022年6月施行】改正特定商取引法のポイントをわかりやすく解説』をご覧ください。

      なお、消費者庁では以下のようなガイドラインを公表しています。特定商取引に該当する場合には、これらのガイドラインについても遵守する必要があります。

      参考:

      免責事項:

      本記事は情報提供のみを目的としており、ごく短期間に法改正が行われる可能性があることから、弊社は全ての情報が最新のものである又は正確であることを保証していません。適用法の許容する範囲において、弊社又は弊社の代理人、役員、従業員若しくは関係会社のいずれも、直接的損害、間接的損害、付随的損害、特別損害、懲罰的損害又は結果的損害(代替商品若しくは代替サービスの調達、使用不能若しくは逸失利益又は事業の中断を含みます。)について、かかる損害が生じる可能性について通知を受けた場合であっても、本記事に掲載されている情報を使用したこと又は使用できなかったことにより生じる契約責任、厳格責任又は不法行為による責任のいずれの責任法理によっても、かかる損害を補償する義務を負いません。本記事に掲載の情報について特定の法律上の質問がある場合は、適切な資格を有する専門家にご相談ください。

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