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Hero Image 積水化学工業、「Vision 2030」実現を目指して挑戦した契約DX ―Docusign CLM の導入で加速する契約ライフサイクル管理の変革
製造

積水化学工業、「Vision 2030」実現を目指して挑戦した契約DX ―Docusign CLM の導入で加速する契約ライフサイクル管理の変革

ソリューションの影響

50%以上
海外取引における電子署名利用率
約15%
秘密保持契約における法務審査の省略率
約120件
DocusignとCoupaとの連携により効率化できるようになった発注業務

使用されている製品

契約ライフサイクル管理

長期ビジョン「Vision 2030」の旗印のもと 契約業務の変革に挑む

1947年、積水化学はプラスチック成形加工のパイオニアとして創業しました。現在、主力事業として、3つの領域でビジネスを展開しています。1つ目は「セキスイハイム」ブランドを展開する「住宅カンパニー」、2つ目は管材をはじめインフラを手がける「環境・ライフラインカンパニー」です。そして3つ目が、エレクトロニクスやモビリティ等向けの高機能材料を提供する「高機能プラスチックスカンパニー」です。

そして、積水化学が次なる成長に向け策定したのが、長期ビジョン「Vision 2030」です。同ビジョンでは、2030年までに売上高を現在の1兆円規模から2兆円へと倍増させる目標を掲げています。その一環として同社の法務部門が主導し、踏み出したのが契約業務の変革でした。

イメージ提供:積水化学工業株式会社

契約業務とは、本来組織の「守り」を固めるものです。企業の防波堤として「守り」の役割を担う法務部門が、なぜ、自ら変革に挑んだのでしょうか。

執行役員 法務部長の福冨 直子氏は、「これまで当社では、カンパニーや現場ごとに契約管理のあり方がバラバラで、属人的な管理が常態化していたのです。このまま業務量が倍増する『Vision 2030』のスピード感に突入すれば、必ず破綻するという強い危機感を抱いていました」と振り返ります。

加えて、法務部門自体のあり方にも課題がありました。

法務がすべての契約を審査する体制では、法務自身がボトルネックとなり、ビジネスのスピードを阻害しかねません。契約書を正しく管理するだけでなく、過去の交渉記録などの『宝の山』を未来の経営に活かせる資産に変えていく。そのためには、契約ライフサイクル全体を一気通貫で管理する仕組みが不可欠でした

福冨 直子 氏執行役員 法務部長, 積水化学工業

法務部 取引・機関法務グループ 担当課長の三浪 拓士氏も「契約書は自らを守るための“守りの武器”と捉えられがちです。しかし、これからの長期ビジョン「Vision 2030」が求めるビジネススピードを考慮すると、それだけでは不十分です。迅速な契約締結を実現し、取引件数を拡大してビジネスを加速させる“攻めの武器”へと進化させる必要がありました」と強調します。

こうした動きから、全社的にDXが推進されるなかで、同社は法務部門が取り組むべき変革の起点として「契約ライフサイクル管理」の実現へ踏み出しました。

紙書類を中心としたアナログ業務が常態化し 契約プロセスが分断

これまで積水化学は、契約業務に関してどのような課題を抱えていたのでしょうか。「契約を取り巻くプロセスそれぞれが分断しており、紙書類を中心としたアナログな業務が行われていました」と三浪氏は振り返ります。

「例えば契約の締結時には、紙の決裁書を出力し、関係する部署へ社内便で回覧リレーして関係者の押印を集めるといった、アナログな業務が存在していました」(三浪氏)

ここで生じていたのが、契約管理のブラックボックス化です。契約の事前審査や決裁の起案を現場の判断に委ねていたため、法務部門には「現場が必要だと判断して持ち込んできた案件」しか見えていませんでした。

「実際には現場レベルでのさまざまな契約書が存在するにもかかわらず、法務がその実状を把握することが困難な状況に陥っていました」と三浪氏は話します。

大企業ならではの複雑さも、この状況に拍車をかけていました。

当社のように会社規模が広がり、かつカンパニーごとに組織体系が異なる環境では、現場ごとに独自の運用や『現場なりのルール』が複数醸成されてしまいます。結果として、本社側での現状把握すら困難となり、『何が正しい姿か分からない』というカオスな状態に陥っていたのです

三浪 拓士 氏法務部 取引・機関法務グループ 担当課長, 積水化学工業

課題解決の第一歩として取り組んだのが、2017年の決裁業務の電子化です。そして、契約審査依頼の受付システム化を実施し、2020年頃から「Docusign eSignature」を活用した電子署名を導入しました。

この時の選定について、三浪氏は次のように振り返ります。「Docusign eSignatureが持つ先進性には、当時大きな衝撃を受けました。いずれ間違いなくグローバルスタンダードになるだろうと確信したと同時に、契約の最大の目的である『締結』のプロセスにDocusignを導入できれば、将来的にその前後のプロセスも含めた一気通貫の連携(インテグレーション)が実現できると、当時から見据えていました」

「しかし、当時の段階では個々のプロセスの改善はされたものの、依然として契約に関する各プロセスが分断されており、前工程の完了状況の確認や、データ照合に時間を要していました」と三浪氏は話します。

また、電子化に伴う新たな問題も浮上しました。「当時、当社独自の細分化された複雑な決裁承認ルートを自動化することはできず、申請者自身が『自分が今どの決裁ルートに該当する契約を行おうとしているのか』を正しく理解し、決裁規則を読み解き、自ら複雑な決裁ルートを設定する必要が生じてしまったのです。紙で回覧していた頃は、回覧を受けた部署が内容を読み解いて次の部署へリレーを回すといった運用がなされており、起案さえしてしまえば自然と正しいルートで決裁が進む流れが醸成されていました。それがデジタル化によって、かえって申請者が最初から最後まで完璧なルートを自ら設定しなければならないという状況に陥ってしまったのです。現場担当者にとって、これは大きな負担でした。また、電子化・システム化に伴って現場でブラックボックス化していた案件が顕在化するなど案件の増加に伴い、現場・法務部門・管理部門のそれぞれの契約業務にかかる工数がひっ迫するという問題も発生し始めました」(三浪氏)

全契約プロセスのシームレスな連携を目指し Docusign CLM の導入を決定

長期ビジョン「Vision 2030」に寄与する契約業務の改革に向けて、積水化学では次のような方針を掲げて取り組みを進めています。


  1. ビジネススピードの加速と契約の急速な増加に対応する「契約締結サイクルの高速化」

  2. 成長分野/新領域へ人的リソースを集中させるための「定型業務の自動化」

  3. 膨大な契約書を適正に管理する「ガバナンスの強化」


これらの取り組みには、すべての契約プロセスを一気通貫に可視化し自動化できる仕組みを導入し、プロセス間の分断を排除する必要がありました。そこで積水化学が選択したのが、Docusignの契約ライフサイクル管理システム「Docusign CLM」です。

「Docusign CLM を採用した理由は、自動化によりすべての契約プロセスをシームレスに連携し一元管理できることでした。他のソリューションも比較検討しましたが、当社独自の複雑な承認ワークフローの自動化を含めて、契約プロセスを一気通貫を実現できるのは、Docusign CLM だけでした」と、三浪氏は選定理由を説明します。

Docusign CLMを選定した背景には、他システムとの柔軟なインテグレーションにより、契約業務を中核とした「One Platform」の実現が期待できるという点にありました。同社では先行してDocusign eSignatureと購買システム「Coupa 新しいタブで開く」を連携させ、法的要件を満たしたデジタル化を実現していましたが、こうしたeSignatureのインテグレーション実績と将来の拡張性こそが、CLM選定の決め手の一つとなりました。契約業務の効率化には、会計や営業、購買といったさまざまな外部システムとのシームレスな連携が不可欠であり、Docusign CLM は「Docusign CLMコネクタ」の提供によって、これらを容易に統合できます。

「契約は営業や購買といった各業務領域の取引の結果として発生します。積水化学では、SAPやSalesforce、そしてeSignatureとの連携で実績のあったCoupaを活用しています。「契約管理システム」として閉じた環境ではなく、Docusignというプラットフォームが持つ柔軟な連携によって、契約ライフサイクル全体を統合した環境が実現できると考えました」と三浪氏は話します。

このほかにも、ノーコード/ローコードでの設定が可能な「ワークフロー」機能により、複雑な契約プロセスを柔軟に構築できる点も高く評価しました。また、Microsoft Entra IDによるシングルサインオン(SSO)やユーザープロビジョニングに対応しており、セキュアで効率的な運用が実現できることも導入を後押ししました。

「はじめから完璧を求めない」を前提に Fit to Standardとカスタマイズを使い分けた開発

プロジェクトの推進にあたって、コーポレートの法務部門を中心に、各カンパニーの法務担当者が横断的に参加するワーキンググループを設置しました。このワーキンググループによって、各カンパニーからの声を反映しました。「我々本社法務部側が大きな枠組みを作った後、各カンパニーの意見をもらいながら、組織全体で一致団結して進めていきました」と三浪氏は振り返ります。

「構築に向けては理想の業務フローを高い解像度で描けるかが重要となります。Docusign CLM は豊富な機能と高い柔軟性を備えている分、それを自社の業務プロセスにどう落とし込み、活用していくかは、ユーザー側の主体的な設計が問われます。しかし、構築の開始時点でそのすべてを定義するのは現実的に困難です。そうしたことから、Docusign CLM の基本機能や設計思想についても深い理解が必要でした」(三浪氏)

こうした困難に直面するなかで、Docusign CLMの導入にあたってプロジェクトチームが共有していた認識は、「はじめから完璧を求めない」という方針です。

「最初から完璧を目指さずにやろうと思っていたわけではありません。しかし、どれほど緻密に理想の業務フローを開発しても、現場の実態はさまざまで必ず色々な意見が寄せられます。現場の要望をすべて汲み取り、100%満足するものを作り込もうとしていたら、一生ローンチできないという感覚がありました。だからこそ、どこかで『これでいくんだ』と覚悟を決める必要があったのです。まずは大きな枠組みで動かし始め、運用しながら現場の声を反映して直していくという決断を下しました」と三浪氏は語ります。

法務部 取引・機関法務グループ 担当課長の福井 和大氏も、「そこで、業務をシステムに合わせる『Fit to Standard』に加え、当社の複雑な決裁プロセスに合わせたカスタマイズを施す“ダブルのアプローチ”を採用しました。具体的には、審査や保管といった一般的に発生する契約関連機能はDocusign CLM の標準機能を採用しました。一方、当社固有の決裁プロセスについて、Docusign CLM を業務に合わせカスタマイズしています」と説明します。

また、構築にあたってはDocusignとの間でも密な連携が行われました。当初は、積水化学の複雑な組織体制や独自の業務の仕組みに対する理解とシステム仕様の間に隔たりも生じていたといいます。その後、定例会などでの対話を重ねて相互理解を深めることで、最終的なプロジェクトの完遂につなげられました。法務部 取引・機関法務グループ 村上 康太郎 氏は「Docusignのエンジニアは高いレベルで我々の要求に対応してくれました。当社の要望について、Docusign CLMの標準機能を駆使した最適な解決策を提案、迅速に実装してくれるなど、プロジェクトではさまざまな場面で助けられたと評価しています」と振り返ります。

全契約プロセスの一元化と自動化を実現 購買システムとの連携による業務効率化も達成

2025年2月から本番運用が開始されたDocusign CLMは、積水化学の契約業務に多くの変革をもたらしています。契約業務の現場において、カンパニー法務部門担当者からも声が寄せられています。

1. 電子署名の利用拡大

Docusign eSignatureおよびDocusign CLM の導入がもたらした変革の1つが、電子署名の利用拡大です。「Docusign CLM の導入後、電子署名の利用率は約30%上昇し、海外取引の半数が電子化されたほか、約60%の案件が24時間以内に締結されています」と三浪氏は話します。

2. 契約書の自動作成

Docusign CLM の「文書自動生成」機能により、現場の担当者が入力フォームに内容を入力すれば、Wordでの契約書文書が自動作成される仕組みが実現できました。現在8種類のひな形が自動生成されています。秘密保持契約の約4割が自動生成されるようになり、法務審査の省略率もおよそ15%まで向上しています。また、複雑な英文契約なども現場の担当者によって作成可能になりました。

高機能プラスチックスカンパニー 経営管理部 法務グループの担当課長 細川 真以氏はこう評価します。

従来は別途作成していた伺書や契約書案の一部も自動生成されるようになり、現場の契約作成にかかる手間が軽減され、利便性が向上しました

細川 真以 氏高機能プラスチックスカンパニー 経営管理部 法務グループ 担当課長

3. 決裁ルートの自動化

先にも述べたように、これまでは利用者自身が複雑な決裁ルートを設定しなければならないという課題が新たに浮上していました。これに対して、Docusign CLM 上の入力内容とユーザーの所属情報を組み合わせることで、承認ルートを自動的に設定できるようになっています。

住宅カンパニー 経営管理部 法務部の担当係長 仲山 翔一郎氏はこう評価します。

複雑な審議ルートが自動化されたことで、起案者による入力ミスや差し戻しが減り、管理部門の業務負荷が削減されています

仲山 翔一郎 氏住宅カンパニー 経営管理部 法務部 担当係長, 積水化学工業

4. 契約管理の統一化

契約に関するワークフローがDocusign CLM に統合されたことで、業務の大幅な効率化が図られています。仲山氏は、「これまでは契約審査の依頼と決裁の2つのワークフローが必要でした。Docusign CLM の導入後は、これらを一気通貫で行えるようになり、業務の重複や無駄が解消されました」と話します。契約情報の一元管理が可能になったことで、多くのメリットがもたらされています。

環境・ライフラインカンパニー経営管理部 法務・コンプライアンスグループの担当課長 瀧川 圭氏と法務部 取引・機関法務グループ 小島 健介氏はこう話します。

これまでメールや電話などでも受け付けていた契約審査の窓口をDocusign CLM に一本化し、すべての契約情報を一元管理できるようになりました。Docusign CLM 上に全契約データが正確に蓄積されるため管理性が向上し、原本紛失といったリスクも解消されています

瀧川 圭 氏環境・ライフラインカンパニー経営管理部 法務・コンプライアンスグループ 担当課長, 積水化学工業

従来は法務の審査後に『実際に起案されたのか』『どこで滞っているのか』を把握できず、申請者にその都度確認する必要がありました。しかし、Docusign CLM の導入によって審査から決裁起案までが一元化され、案件番号で進捗を追跡できるようになりました。確認にかかる業務を減らせています

小島 健介 氏法務部 取引・機関法務グループ, 積水化学工業

5. 購買システム「Coupa」との連携による業務効率化

Docusign CLMの導入に先立ち、2020年から、購買システム「Coupa」とDocusign eSignature の連携も実施されました。これにより、建設業法などの法的要件を満たしつつ、契約書の自動作成から保管までを自動化する仕組みを実現しています。

生産基盤強化センター 購買・サプライチェーングループ 設備購買チームリーダーの谷口 健太 氏は、「以前は購買に関する契約手続きを紙文書で行っており、出力や押印、郵送といったアナログな事務作業が大きな負担となっていました。月間120件近い発注業務を抱えており、これらの業務負担のほか、郵送料や印紙代のコストも課題となっていました」と振り返ります。

現在、CoupaとDocusignを使うことで業務プロセスの大幅なデジタル化を達成しました。谷口氏はこう評価します。

月間120件近い発注業務を、これまでと同じ人員体制のまま、こなせるようになりました。業務効率化によって浮いた時間を、予算化前のサプライヤー紹介や与信確認、スケジュールの提案といった、より付加価値の高い活動により注力できるようになったことです

谷口 健太 氏生産基盤強化センター 購買・サプライチェーングループ 設備購買チームリーダー, 積水化学工業

加えて、業務フローの標準化により、サプライヤーと当社の標準条件による取引が可能となり、また、属人化が解消できたことも大きなメリットだといいます。さらに、契約書の電子化による印紙代の削減など、自社のみならず取引先にも大きなメリットをもたらしています。

「Vision 2030」の実現に向けて契約DXを推進 現場の業務に資する仕組みづくりを目指す

Docusign CLMの導入から9カ月が経過し、契約プロセスの管理が定着した今、積水化学はさらなる契約DXを推進していく考えです。

その施策の1つがAIの活用です。三浪氏は、「審査過程の支援に加え、締結済み契約を経営資産として活用するために、AIによる属性付与や分析、数値化の実現を目指していきます。収集したデータを分析してフィードバックすることで、各部署が自らの傾向を把握して改善につなげられる、現場の業務に資する仕組みづくりを推進していきたいと考えています」と展望を語ります。あわせて三浪氏は、「当社は多様な事業や現場を抱えており、だからこそ、製品としての機能の豊富さだけでなく、それを各現場の業務にどう落とし込み、使いこなせる形に整えていくかが重要です。運用を通じて改善を積み重ね、より使いやすい仕組みへ進化させていきたいと考えています」と付け加えます。

このデータ活用の先に見据えているのが、契約業務を通じた「攻め」の強化です。「契約書は、万が一の裁判の証拠という側面もありますが、それ以上に取引を有利に進める『ビジネスのルールブック』だと捉えています。CLMによってプロセスを効率化し、そこで生まれた時間を、過去のデータを活かして『いかに自社にとって良い条件を勝ち取るか』というより深い交渉に集中させる。そのためのナレッジマネジメントとして、契約DXを進化させていく必要があります」と福冨氏は語ります。

さらに、社内に向けた長期ビジョン「Vision 2030」の達成キーワードとして、福冨氏が掲げるのが「UX法務」です。「これまでの法務部門は、専門知識を武器に現場からの相談を受け、すべての契約をチェックして通す『ゲートキーパー(関所)』のような存在でした。しかしこれからは、現場の社員が自律的に正しい判断をし、自走していけるよう支援する『ガードレール』のような役割へと変革していきたいと考えています」と福冨氏は力を込めます。

Docusign CLM の導入により、契約DXを大きく前進させた積水化学。Vision 2030に向けた法務部門の果敢な挑戦は、今後ますます続いていきます。

そのために、まずは全社員が常に正しく業務を遂行できるような、コンプライアンス確保のためのインフラ作りを目指しています。この観点から、インフラとなるDocusign CLMを『正しく業務を行うためのプレイブック(行動指針)』として進化させていきたいと考えています。その過程ではAI技術の活用も必要になります。DocusignにはAIを活用した法務DXを強力に支援するソリューションの提供を期待しています

福冨 直子 氏執行役員 法務部長, 積水化学工業

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