
日本航空、Docusignで“契約業務のボトルネック”を解消 — 「誰でも使える」仕組みでJALグループへ広がる契約DX
ソリューションの影響
サマリー
※ 本記事に含まれる数値・発言は、JALご担当者様へのインタビューをもとに構成しています。製品名・機能名は執筆時点の内容であり、予告なく変更される場合があります。
“押印のために出社する”──コロナ禍で一層浮き彫りになったこの非効率を解消するため、JALは契約業務の抜本的な見直しに着手しました。総務本部と調達本部が「なぜ契約プロセスが止まるのか」を分析したところ、ボトルネックは押印・製本・郵送といったアナログ作業でした。この物理的な業務プロセスをDocusignによって解消したことで、人や場所に制約を受けない契約プロセスを実現し、電子契約そしてそれを支えるDocusignは、“なくてはならない業務インフラ”へと変わりました。初年度こそ利用は伸び悩んだものの、説明会の開催、テンプレートの整備、利用状況の可視化など、利用者視点に立った取り組みを重ねた結果、利用者は着実に拡大。現在では40以上のサブアカウント*で、年間約16,000件もの契約が電子化されています。導入効果は非常に大きく、調達本部において、契約書を紙で運用していた時期は、社内審査から契約締結を完了するまで、約28日間を要していましたが、導入後は約14日へと半減。全社においても、Docusign上のプロセス(契約先に署名を依頼してから、契約先が署名を完了するまで)は平均わずか3日で完結しており、ビジネスを停滞させないスピーディな契約体制を実現しています。
※サブアカウントとは、企業の子会社・グループ会社・部門などの単位で、個別に利用環境(アカウント設定・権限・テンプレート等)を作成できるDocusign独自の構造です。グループ会社ごとに運用ルールを持ちながら、親アカウント側では利用状況を統合管理できるため、多拠点・多事業を展開する企業でのスケール利用に適しています。
ネット通販で買い物をするような感覚で、初めての担当者でも迷わず操作できる。“誰でも使える”ことが定着の決め手でした。
村田 真樹子 氏総務部 アシスタントマネジャー, 日本航空株式会社
煩雑さが招いた“定着しない電子契約”
航空インフラを担うJALをはじめ、航空業界の契約に係る業務は、シビアな“時間との戦い”に晒されています。特に、エンジン部品のトラブルなど、運航維持に直結する案件では、一刻も早く契約を締結し、部品の手配を進めなければなりません。『なぜか、緊急案件は金曜日の夕方に発生することが多いのです』と小松氏が苦笑するように、契約書を紙で運用していた頃は、週末であっても、担当者が製本や押印のためだけに出社せざるを得ないことが、たびたび発生していました。前述のとおり、社内審査から契約締結を完了するまでには、平均で約28日間を要していましたが、海外とのやり取りにおいては、さらに時間がかかることも少なくありませんでした。
こうした問題を打開するべく、JALでは過去にも電子契約を導入していましたが、取引先に電子証明書の取得を求める仕様や、日本語以外のユーザーインターフェースの不備などの理由から、利用率はわずか5%に留まっていました。利用した社員からは「結局、紙のほうが早い」という声さえ上がっていました。
“便利なはずなのに使われない”——このギャップこそが、電子契約定着の最大の壁でした。
小松 圭延 氏調達本部 マネジャー, 日本航空株式会社
使いやすさ・柔軟性・拡張性でDocusignを採用
2020年夏、JALは新たな電子契約サービスの導入検討を開始。複数の製品を比較した結果、Docusignを選定しました。JALがDocusignを選んだ最大の理由は、「誰でも迷わず使えること」でした。Docusignでは、取引先に電子証明書の取得を求める必要がなく、URLを開くだけで署名が完了できます。また、初めて使う社員でも操作に迷うことがない直感的なユーザーインターフェースや、契約書によって署名位置が異なる場合でもドラッグ&ドロップで簡単に配置できるという柔軟性とともに、自社の海外拠点での利用や海外企業との契約には欠かせない多言語対応も充実しています。これらにより、“電子化できる契約”が大きく増加しました。
また、当時すでにDocusignを利用していた取引先企業から、「実務でどう定着させているか」「取引先にどう説明しているか」など具体的なノウハウを共有されたことも、利用を促進するうえで、大きな参考になりました。
実際に使っている企業から“利用者視点の運用知見”を教えていただけたことで、導入後のイメージを一気に掴むことができました。
村田 真樹子 氏総務部 アシスタントマネジャー, 日本航空株式会社
スモールスタートから“仲間を増やす”横展開へ
導入初期の一番の壁はユーザーの“心理的ハードル”でした。「こちらが便利だと思って薦めても、相手からすると“押しつけられている”ように感じられてしまうことがある。最初の一歩を踏み出してもらうことが難しかった」と村田氏は振り返ります。どれほど合理的な仕組みでも、利用者からすると「今までと違うやり方」自体が負担になって、Docusignをなかなか使ってもらえなかったといいます。
そこでまず、総務本部と調達本部が説明会を通じて、利用者の不安解消に努めました。説明会では利用者自身がその場で契約書を送信し、“やってみたら、実は簡単”ということを体感してもらうことに重点を置きました。こうした取り組みの積み重ねによって、Docusignは徐々に職場へと浸透していきました。また、主管部である総務部に問い合わせや手続きが集中しないよう、特定の職場にDocusignの管理者をアサインし、利用者のアカウント発行などの手続きを各職場で完結できる体制も整えました。 大きな転換点となったのは、グループ会社の社員が集まる会議での紹介でした。総務本部や調達本部といった管理部門が一方的に導入を促すのではなく、既にDocusignを利用しているグループ会社の社員が使いやすさを自ら語る場を設けたのです。同じ立場である他の利用者から生の声を聞けたことで、参加者の納得感は大きく高まりました。
導入にあたっては、“押しつける”のではなく、“便利さを実感してもらうこと”を最優先にしました。実際に使っている人の生の声を聞いてもらい、不安があれば一緒に手を動かす。こうした“体験”と“共感”の積み重ねが、結果としてJALグループ全体への急速な横展開につながったのです。
村田 真樹子 氏総務部 アシスタントマネジャー, 日本航空株式会社
導入・運用の過程では、様々な支援を受けることができる“Docusignサポート”も積極的に活用していたといいます。「私たちが抱える疑問に対して、的確に回答していただけることが多く、とても助かっています。いただいた回答は当社内でも共有し、“こういうケースはこのように対応する”といったノウハウを蓄積しています」。こうした“Docusignサポート”を通じた“伴走型の支援”も利用拡大を後押ししました。
こうした取り組みにより、2年目以降は利用が加速し、現在はサブアカウント40以上/年約16,000件へ利用規模が拡大しています。
効果:スピード・コスト・安心感の三位一体で改善

*電子契約処理件数(年間)は、導入初期(約4,000件)と現在(約16,000件)の利用実績比較
Docusignの導入により、担当者は紙への押印から解放され、出社することなく契約を完了できるようになったことで、安心して在宅勤務を行えるようになり、利用者の心理的な負担も大きく軽減されました。また、印紙代・郵送費などのコスト削減など定量的な効果にも繋がっています。さらに、郵送による数日の待ち時間や、契約先へ返送状況を確認するための電話も不要になり、「契約書に追われる感覚がなくなった」「契約作業の進捗を見通せるようになった」という声も上がっています。航空機部品の調達など、即時性が求められる契約でも迅速に対応できる体制が整い、JALの使命である航空インフラを支える基盤のひとつとなっています。
例えば、航空機の部品調達など、即時性が求められる契約では、“この時間までに契約を結ばないと飛行機が飛ばせない”というケースもあります。航空会社には定時運航という使命がありますから、必要な契約を迅速に締結できることは、安全運航を守るうえでも大きな安心材料のひとつになります。
小松 圭延 氏調達本部 マネジャー, 日本航空株式会社
セキュリティとガバナンス:業務プロセスの“入口”に潜むリスクを断つ
電子契約の利用が定着し、扱う契約数が増えるにつれ、JALの視点は「締結スピードの向上」から「プロセス全体の安全性の確保」へと深まっていきました。 その過程で浮上した問題が、電子署名に必要な契約先に関わる情報の取り扱いです。これまで、それらの情報は契約先からメールで取得し、Docusign上で転記していましたが、この方法は、誤って署名者の氏名や連絡先などの過去の情報で進めてしまい、ミスを引き起こすリスクが常に潜んでいました。
そこでJALが検討しているのが、メールを使わずに契約先の情報を取得することができる機能の活用です。具体的には、Docusignの機能であるWebフォームやインテリジェント契約管理(IAM)を活用することで、契約先が必要な情報をDocusignに直接入力し、そのまま契約書へ自動連携させる機能です。
“定着の要諦”——テクノロジーではなく「文化」をつくる
JALの取り組みから見えてくるのは、デジタル化の成否はテクノロジーではなく“文化づくり”にあるという点です。小さな成功体験を積み重ね、テンプレートとルールで再現性を持たせ、利用者の評価を広めることで、自然と横展開が生まれます。利用者に寄り添うことで、電子契約は単なるツールではなく業務インフラとして定着しました。
難しい仕組みでは続かない。“誰でも使える”ことが、結局いちばんの定着ポイントでした。
村田 真樹子 氏総務部 アシスタントマネジャー, 日本航空株式会社
JALの事例は、利用者視点を大切にし、管理者が利用者を巻き込みながら全社展開を実現した電子契約の導入における好例です。使いやすさ・柔軟性・ガバナンスを兼ね備えたDocusignだからこそ、スピード・コスト・安心感の三拍子を実現し、契約DXを確かなものにしています。

