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2026年までに廃止?約束手形の基礎知識を解説

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2021年2月、経済産業省は2026年までに約束手形の利用を廃止する方針を固めました。企業間の支払手段として広く知られる約束手形が、なぜ今、廃止されようとしているのでしょうか。そこで本記事では、約束手形の歴史や使用方法などの基礎知識を紹介しながら、廃止が求められる背景についても解説します。

目次

2021年2月、経済産業省は2026年をめどに約束手形の利用を廃止する方針を決定し、産業界に求めていくと発表しました。企業間の支払手段として用いられる約束手形がなぜ今、廃止されようとしているのでしょうか。今回は、約束手形の歴史や使用方法といった基礎知識を紹介し、廃止が求められる背景について解説していきます。

なぜ必要?約束手形の基礎知識

約束手形とは、発行者(振出人)が受取人に対して、特定の期日までに所定の金額を支払うことを約束する支払手段です。多くの場合、企業が取引先への支払いに猶予期間(支払サイト)を設けるために利用されています。支払いまでの期間を延ばすことで、発注企業は資金繰りの負担が軽減され、手元の資金が不足していても事業の継続が可能になります。

例えば、ある建設会社が建物を建設するときには、資材費など莫大な費用が必要となりますが、建物が完成したのちにしか売上が得られない場合、建設費用のすべてを事前に用意するのは困難です。そこで、約束手形を利用して資材などを購入することで、事前に莫大な費用を用意しなくても、建物の建設が可能になります。

約束手形の基本的な利用方法と仕組み

それでは、具体的に約束手形はどのような仕組みのもとで利用されるのでしょうか。一般社団法人全国銀行協会発行のパンフレット「手形・小切手の基礎知識」を参考に、約束手形の基本的な利用方法を紹介します。

<約束手形のサンプル>

約束手形サンプル

出典:一般社団法人全国銀行協会 手形・小切手の基礎知識 ② 手形・小切手の法律 P12

1. 約束手形の交付を受ける

発行者(振出人)は、銀行に当座預金口座を開設して、約束手形の交付を受けます。このとき銀行からは、一般社団法人全国銀行協会が定める統一手形用紙が交付されます。

2. 約束手形の発行

商品を購入し、その支払手段として約束手形を発行します。発行の際には支払期日や金額などを手形用紙に記載します。

3. 当座預金口座への入金

発行者(振出人)は支払期日までに、所定の金額を当座預金口座に振り込みます。

4. 手形交換所への支払呈示

受取人は支払期日に銀行の手形交換所に約束手形を提示します。この行為を支払呈示と言います。

5. 銀行による支払い

支払呈示を受けた銀行は、発行者の当座預金口座から受取人に所定の金額を支払います。

約束手形の歴史 - 1990年代以降は流通量が減少

約束手形の歴史は古く、その確立は1882年(明治15年)に遡ります(※1)。有価証券による商取引慣行は江戸時代から存在していましたが、明治時代に初めて法整備がなされ、以降、企業間の支払手段として普及していきました。

なかでも約束手形の利用が急増したのは、高度経済成長期でした。当時は、企業の資金需要が増加し、金融機関による融資が追いつかない状況にありました。そのため、発注企業は融資の代替手段として約束手形を支払手段とすることで、資金不足を補いました。

しかし、1990年代に入ると、企業による資金需要が縮小に転じたことや、資金調達の手法の多様化などを背景に、約束手形の流通量は減少していきました。財務省の調査によれば、1990年度のピーク時から約30年で、約束手形の総残高は約4分の1に減少しています (※1)。

なぜ今、約束手形の廃止が求められているのか

ピーク時に比べると流通量の少なくなった約束手形ですが、卸売業や製造業など特定の業種では、現在でも比較的多くの場面で利用されています。しかし、なぜ今、廃止が求められているのでしょうか。

有識者を集めて開催された経済産業省の検討会では、約束手形廃止を求める大きな理由として、「取引先に資金繰りの負担を求める取引慣行の改善」を挙げています(※1)。同会は、約束手形による支払いの猶予期間(支払サイト)の平均は約100日と、現金に比べて約2倍の長さになっており、取引先の資金繰りにおける負担になっていると報告。また、支払いの猶予期間における利息などが支払われていないことと併せて、約束手形は「弊害の伴う支払手段であるとも言える」と指摘しています。

さらに、約束手形による支払いは、世界の中でも日本、中国、韓国等の一部の国のみで行われており、欧米の企業にとっても魅力的なビジネス環境を作る上で、取引先に対して資金繰りの負担を寄せる取引慣行は見直されるべきだとしています。

そのほか、同会は紙の約束手形を取り扱う事務負担やリスクにも言及しています。紙である以上、約束手形は現金同様の取扱いが求められ、それに伴うコストやリスクは決して少なくありません。同会によれば、約束手形が紙であることにより、社会全体で年間約2042億円のコストが発生しているとしています。

このような理由により、経済産業省は2026年までの約束手形の利用廃止を求めています。今後は、約束手形から現金振込への移行を推奨するほか、直ちに現金振込に移行できない企業に対しても、約束手形などを電子化してインターネット上で取引する「電子記録債権」の利用を求めるとしています。

また、こうした方針を受けて、現在、全国銀行協会は手形や小切手の削減を推進中です(※2)。2019年から5年間で手形や小切手の6割減を目標としており、約束手形は、今まさに私たちの社会から姿を消しつつあります。

社会全体におけるドラステックな変化は相次いでおり、昨年は行政手続きにおける認印の全廃デジタル庁の創設が発表され、今後も政府組織を主導とした改革の取り組みは続くと見込まれています。私たちの社会は今、デジタル化による変革の過渡期にあるといっても過言ではありません。

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参考:

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