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会社法とは?経営者が知るべき会社法の要点をわかりやすく解説

阿部 由羅
阿部 由羅ゆら総合法律事務所・代表弁護士
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「会社法」は2007年に全面施行された法律で、会社の設立や組織運営、管理について定めています。会社法が制定される以前は、「商法」によって会社の設立・運営等に関するルールが定められていました。本記事では、会社法について、役割や規定内容、事業を運営する上で知っておくべき要点をわかりやすく解説します。

目次

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会社の設立や組織運営、管理について定めた「会社法」は、会社が事業を進めるうえでの基本となる法律になります。そのため、会社法の主なルールについて正しく理解し、適切に事業運営をしていくことが重要です。

本記事では、会社法について、役割や規定内容、企業の経営者が知っておくべき要点をわかりやすく解説していきます。

凡例:

  • 法・・・会社法

  • 規則・・・会社法施行規則

会社法とは?役割および制定・改正の歴史

会社法とは、会社の設立や組織・運営、管理について定めた法律です。2005年に成立し、2007年に全面施行されました。

会社法が制定される以前は、会社の設立・運営等に関するルールは「商法」によって定められていました。しかし、その内容は時代に沿っているとは言い難く、さらに度重なる法改正によってそれぞれの規定の中で矛盾が生じていました。

こうした状況を改善するため、より現実的なコーポレートガバナンスのルールを確立する体系的な法律として、2007年に会社法が施行されました。その後、2014年にはコーポレートガバナンスの強化および親子会社規制の整備、2019年には株主総会・役員・社債の管理などに関する規律の見直しを中心とする主要な改正が行われ、現在に至っています。

会社法で定められている主な内容とは?

会社法のルールは多岐にわたります。その中でも、企業経営者にとって特に重要度が高いものを紹介していきます。

  1. 会社の種類

  2. 株式(株主平等の原則・発行・譲渡など)

  3. 株式会社の機関

  4. 会社の解散・清算

  5. M&Aの手続き

  6. 会社の登記

1. 会社の種類

会社法では、以下の4種類の会社が認められています。そのうち、合名会社・合資会社・合同会社の3つは「持分会社」と呼ばれています。

(a) 株式会社

株主が出資し、取締役が経営を行う会社です。会社の所有者である株主と、経営者である取締役が分離しています(=所有と経営の分離)。

(b) 合名会社

社員が出資をして、自ら経営を行う会社(=持分会社)です。株式会社とは異なり、持分会社では所有と経営が一致しています。合名会社の場合、社員全員が会社の債務について直接無限責任を負うことになっています。

(c) 合資会社

会社の債務について、社員の一部が直接無限責任を負い、その他の社員が間接有限責任のみを負う持分会社です。

(d) 合同会社

会社の債務について、すべての社員が有限責任のみを負う持分会社です。

会社の種類では、株式会社または合同会社の形態が多いのが実状です。中でも株式会社の会社数が多く、そのルールは詳細にわたるため、会社法の中でも株式会社に関する規定の重要度は高いといえます。

2. 株式(株主平等の原則・発行・譲渡など)

会社法では、株式会社の株式についてさまざまなルールを定めています。

株式に関するルールの中で最も重要なのが「株主平等の原則」です。株式会社は原則として、株主を株式の内容や数に応じて平等に取り扱わなければなりません(法109条1項)。投資家が安心して株式を購入できるようにして、大規模な資金調達を可能とすることが株主平等の原則の目的です。

株式に関しては、その発行や譲渡についても詳細なルールが定められています。会社が株式を発行する場合、自己株式を取得する場合、株式を取得した者から名義変更を申請された場合などには、会社法に従った手続きを行わなければなりません。

3. 株式会社の機関

持分会社の機関設計ルールは比較的緩やかですが、株式会社については多くの人々から出資を募ることが想定されるため、設計について厳密なルールが定められています。

株式会社において必ず設置しなければならない機関は、株主総会と取締役のみです。株主総会は会社の重要な事項を決定し(法295条)、取締役は会社の業務を執行します(法348条1項)。

そのほか、取締役会・会計参与・監査役・監査役会・会計監査人などの設置が認められています。これらの機関の設置は原則として任意ですが、会社の規模などに応じて設置が必須となる場合もあるので注意が必要です。

4. 会社の解散・清算

会社を廃業する際には、会社法に定められた解散・清算の手続きを行う必要があります(株式会社について法471条~509条、持分会社について法641条~675条)。

株式会社は株主総会の特別決議(法471条3号、309条2項11号)、持分会社は総社員の同意(法641条3号)によって解散するケースが多いです。解散後は、清算人が現務の結了・債権の取り立ておよび債務の弁済・残余財産の分配を行い(法481条、649条)、最終的に会社の法人格は消滅します。

なお、会社が債務超過である場合は、株式会社に限り「特別清算」が認められています(法510条~574条)。特別清算によらずに債務超過の会社を清算するためには、破産法に基づく破産手続きによらなければなりません。

5. M&Aの手続き

会社のM&Aは、以下のいずれかの方法によって行われるのが一般的です。

  1. 株式譲渡:会社の株式を譲渡することにより、経営権を売主から買主に移転します。

  2. 事業譲渡:会社の事業の全部または一部を、別の会社に移転します。

  3. 合併:複数の会社が1つの会社になります。

  4. 会社分割:会社が有する権利義務の全部または一部を分割して、別の会社に承継させます。

  5. 株式交換:会社の発行済株式の全部を既存の別会社に取得させて、100%親子会社を形成します。

  6. 株式移転:当事者となるすべての会社が、その発行済株式の全部を新設会社に取得させて、グループ会社を形成します。

  7. 株式交付:相手方の会社の株式を譲り受ける代わりに、自社の株式を発行し、相手方の会社を子会社化します。株式交換とは異なり、100%親子会社となる必要はありません。

これらのM&A手続きを行う際には、いずれも会社法で定められた手続きやルールに従わなければなりません。

6. 会社の登記

会社に関する重要な事項については、本店所在地を管轄する法務局または地方法務局にて登記する必要があります。会社法では、会社が登記すべき事項を詳細に定めています(法911条以下)。

なお、登記事項に変更が生じたときは、原則として変更日から2週間以内に変更登記を申請しなければなりません(法915条1項)。

事業運営に関する会社法上の注意点

株式会社の事業運営にあたっては、会社法に関連して、特に以下の点に注意する必要があります。

  1. 株主総会の招集・開催の手続きに注意する

  2. 株主総会・取締役会については議事録を作成・保存する

  3. 役員等が負う責任に注意する

1. 株主総会の招集・開催の手続きに注意する

すべての株式を親族などが保有する同族会社を除き、株主総会の招集および開催は、会社にとって重要な業務の1つです。

株主総会の招集・開催については、会社法で詳細に手続きやルールが定められています。特に招集手続きに関する規定(招集事項の決定・招集通知の発送など。法296条~302条)や、株主総会決議に関する規定(法309条~313条)は、実際に株主総会を開催する前に確認しましょう。

2. 株主総会・取締役会については議事録を作成・保存する

株主総会および取締役会の議事については、会社法および会社法施行規則の規定に従って議事録を作成する必要があります(株主総会議事録につき法318条1項、規則72条。取締役会議事録につき法369条3項、規則101条)。

株主総会議事録については、本店には原本を10年間、支店には写しを5年間備え置かなければなりません(法318条2項、3項)。取締役会議事録については、本店に10年間備え置かなければなりません(法371条1項)。

株主総会議事録取締役会議事録は、いずれも株主や債権者による閲覧・謄写請求の対象となるため、会社法の規定に沿ってきちんと作成しましょう。

3. 役員等が負う責任に注意する

取締役・会計参与・監査役・執行役・会計監査人(=役員等)がその任務を怠ったときは、原則として会社に生じた損害を賠償する責任を負います(=任務懈怠責任。法423条1項)。

また、役員等が悪意または重大な過失によって第三者(株主・債権者・取引先など)に損害を与えた場合には、その損害についても賠償しなければなりません(法429条1項)。

さらに、取締役・会計参与・監査役・執行役などが、自己もしくは第三者の利益を図り、または株式会社に損害を加える目的で任務に背く行為をし、株式会社に財産上の損害を与えたときは「特別背任罪」により罰せられることもあります(法960条)。したがって、特に取締役は、会社法に基づく法的責任を問われないように、会社の業務を執行するにあたっては注意深い検討と判断力が必要になります。

まとめ

会社法上の手続きやルールに関する理解は、会社を経営する上で必要不可欠です。企業の経営者は、自社の会社組織や事業内容などに応じて、適用される会社法の規定を正しく把握しておく必要があります。

おすすめ記事:株主総会や取締役会はどう変わる?改正会社法をわかりやすく解説

免責事項:本記事は情報提供のみを目的としており、ごく短期間に法改正が行われる可能性があることから、弊社は全ての情報が最新のものである又は正確であることを保証していません。適用法の許容する範囲において、弊社又は弊社の代理人、役員、従業員若しくは関係会社のいずれも、直接的損害、間接的損害、付随的損害、特別損害、懲罰的損害又は結果的損害(代替商品若しくは代替サービスの調達、使用不能若しくは逸失利益又は事業の中断を含みます。)について、かかる損害が生じる可能性について通知を受けた場合であっても、本記事に掲載されている情報を使用したこと又は使用できなかったことにより生じる契約責任、厳格責任又は不法行為による責任のいずれの責任法理によっても、かかる損害を補償する義務を負いません。本記事に記載の情報について特定の法律上の質問がある場合は、適切な資格を有する専門家にご相談ください。

阿部 由羅
阿部 由羅ゆら総合法律事務所・代表弁護士

ゆら総合法律事務所・代表弁護士(埼玉弁護士会所属)。1990年11月1日生、東京大学法学部卒業・同法科大学院修了。弁護士登録後、西村あさひ法律事務所入所。不動産ファイナンス(流動化・REITなど)・証券化取引・金融規制等のファイナンス関連業務を専門的に取り扱う。民法改正・個人情報保護法関連・その他一般企業法務への対応多数。同事務所退職後、外資系金融機関法務部にて、プライベートバンキング・キャピタルマーケット・ファンド・デリバティブ取引などについてリーガル面からのサポートを担当した。2020年11月より現職。一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。弁護士業務と並行して、法律に関する解説記事を各種メディアに寄稿中。

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