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日本の生産性はなぜ低い?国際比較ランキングから「生産性向上」の秘訣を探る

安達 智洋リード・コンテンツ・マネージャー
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日頃、何気なく口にする「生産性」という言葉。しかし、それがどんな定義で、どのように測るものなのか、正確に把握している方は少ないのではないでしょうか。そこで本記事では、生産性の国際比較ランキングを読み解くことで、その言葉の本質に迫り、生産性向上を実現する秘訣について考察します。

目次

清潔な工場の内部

日本の労働生産性は、主要先進国中で最下位 ― それが日本の現状です。2019年に発表された調査によれば(※1)、日本における1時間あたりの労働生産性は、OECD加盟国の36カ国中21位。主要先進7カ国(G7)の中では、1970年以降、約50年間にわたって最下位の状況が続いています。しかし、「生産性が低い」とは、一体どのような状況を指し、何を原因としているのでしょうか。そこで本記事では、労働生産性の国際比較ランキングを読み解きながら、労働生産性の定義や測定方法を紹介し、日本の労働生産性を向上させるためのヒントを探っていきたいと思います。

生産性とは?どうやって測る?その定義や測定方法を解説

生産性の定義をご存知でしょうか。社会における生産性の調査研究を行う公益財団法人「日本生産性本部」は、生産性の定義を「生産諸要素の有効利用の度合いである」としています(※2)。

製品や農作物などを生産するためには、原材料や機械設備、エネルギーなどの「生産要素」が必要になります。生産性とは、生産要素と産出された生産物との相対的な割合のことであり、言い換えれば「投入(インプット)に対して、どれだけの産出(アウトプット)が得られたか」を測る指標です。

そのため、生産性は計算式で

生産性=(産出(アウトプット))/(投入(インプット))

と表現されます。

生産性は、投入した生産要素ごとに測ることができるため、資本の観点から生産性を測定する「資本生産性」や、労働力、資本、原材料などすべての生産要素を合計して測定する「全要素生産性」など、複数の種類が存在しています。そのなかでも、最も多く用いられるのが、労働力の観点から生産性を測る「労働生産性」です。冒頭に述べた、国際比較ランキングは、労働生産性を基準としています。

労働生産性は、労働者1人あたり、あるいは労働1時間あたりでどれだけの生産物を産出したかを測る指標であり、計算式では以下のように表現されます。

労働者1人あたりの労働生産性=生産量/労働者数 労働1時間あたりの労働生産性=生産量/(労働者数×労働時間)

なぜ日本の生産性は上がらないのか?国際比較ランキングを読み解く

では、なぜ日本の労働生産性は低いのでしょうか。「主要先進国で最下位」というフレーズを目にすると、思わず「無駄の多い働き方をしているから」と結論付けてしまいそうです。しかし、国ごとの労働生産性は、各国の社会的状況によって大きく変動するため、必ずしも働き方の効率性だけが原因とはいえません。

例えば、国際比較ランキングで1位のアイルランドは、1990年代以降、法人税率を低くすることでGoogleAppleなどのグローバル企業を多数呼び込み、急激な経済成長を果たし、労働生産性の向上を実現しました。計算式でいえば、アイルランドは分子を拡大させることで数値を向上させており、効率的な働き方が労働生産性を高める主要因ではありません。

それでは、何が日本の労働生産性を引き下げているのでしょうか。国際比較ランキングは、その解説において、日本の労働生産性の低さは「年間労働時間の長さ」が原因のひとつと示唆しています。

国内に製造業を多く抱えるなど、日本と類似した産業構造を有しているドイツは、1時間あたりの労働生産性が国際比較で8位であり、主要先進国のなかでもアメリカに次ぐ順位に位置するなど、高水準の労働生産性を誇っていますが、平均年間労働時間は約1,363時間と欧州内でも少ない傾向にあります。一方で、日本の平均年間労働時間は約1,680時間と、ドイツを年間で300時間以上、上回っています。

1時間あたりの労働生産性の計算式は、分母に労働時間が代入されるため、働く時間が長ければ長いほど、数値が低くなります。それが日本の労働生産性を引き下げる要因になっていると国際比較ランキングは分析しています。

生産性向上を実現させるには?ポイントは意識改革とIT活用

労働時間の長さによる、労働生産性の低下。この課題をどのように解決し、生産性の向上を実現すれば良いのでしょうか。

国際比較ランキングは、短時間で業務をこなす意識改革が重要だと指摘しています。比較に挙げたドイツでは、労働者が所定時間内で業務を終わらせる文化が根付いており、それが高い労働生産性につながっているといいます。また、労働生産性の向上には、ICTへの投資も欠かせません。国際比較ランキングは、主要先進国中で最も高い労働生産性を誇るアメリカのICT関連の投資の特徴に言及しています。

アメリカは、欧州など他の地域に比べて、ICT関連の投資額が高いだけでなく、その技術を使いこなすための情報環境や人材育成など、無形資産にも積極的な投資を行っています。そうした無形資産投資が、労働者のスキル向上や組織改革を促進し、ICT活用の効果を高めているのです。

ICTをはじめとしたIT技術は、生産性向上に大きな役割を果たします。そして、その効果をより高めるためには、IT技術を活用するための環境整備やスキル向上への取り組みも欠かせません。

<あわせて読みたい!賢いIT活用で生産性向上を実現>

生産性向上の秘訣は、日々の改善の積み重ね。まずは身近な課題への対応を

日本は人口減少社会であり、将来的な労働人口の減少も予測されています。そのため、企業においても少人数で最大限の成果を出す取り組みは必要不可欠であり、生産性向上は避けては通れない課題です。

働き方改革を実践するうえでも、生産性向上は重要なポイントになります。成果を落とすことなく、労働時間の削減や労働環境の改善を実現するには、より効率的な働き方の確立が急務です。国際比較ランキングを概観することで、生産性を向上させるには、短時間で業務をこなす意識改革、たとえば、紙の書類を電子化したり、電子署名ソリューションといったIT技術を積極的に活用することが有効であるといえます。また、IT技術の活用においては、ハードウェアやツールに投資するだけではなく、情報環境の整備や従業員のITスキル向上といった無形資産への投資も行うのが重要なポイントです。

意識改革や無形資産投資は、即座に効果が現れにくく、継続的な実践が求められます。職場の業務改善に取り組んでいる場合、まずは身近な課題への対応や、コストの小さいツールの導入などから取りかかり、少しずつ改善を重ねていくことで、生産性向上を実現してみるのも一つの方法です。業務改善に取り組むビジネスパーソンの方も、普段何気なく口にしがちな「生産性」という言葉の本質を知ることで、職場の生産性向上に役立ててみてはいかがでしょうか。

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参考:

安達 智洋リード・コンテンツ・マネージャー
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