今は第三次ブーム?AI(人工知能)の歴史を簡単解説
最先端技術として知られるAI(人工知能)。そのAIには古い歴史があることを知っていますか?本記事では「AIの歴史」にスポットをあて、AIの誕生から日本におけるAI研究、ディープラーニングの登場まで、その技術の進化の過程に迫ります。
近年ビジネスに留まらず、さまざまな分野で活用されているAI(人工知能)。国が掲げる目指すべき未来像「Society 5.0」においては、社会の中核的存在として位置付けられているなど、まさに私たちの未来を象徴する技術と言えます。そのAIには、実は古い歴史があることをご存知でしょうか。AIは、現在に至るまでの間に、さまざまな進化を遂げ、そのなかで次第に実用性を高めてきました。本記事では「AIの歴史」をテーマに、AI技術の進化や研究の過程について紹介します。
いつ「AI(人工知能)」が生まれたのか?
AIの起源をどこに求めるかについては、諸説あります。例えば、17世紀の哲学者・デカルトは、動物を機械のように捉え、その行動や反応を因果関係で解釈できるとする「機械論」を唱えています。こうした議論は、後のAI研究とも共通する部分が多く、AIが生まれる基礎を作ったとも言われています。
一方で、AI(Artificial Intelligence=人工知能)という用語が生まれたのは1956年ごろです。アメリカの計算機科学者ジョン・マッカーシーは、学術研究会議「ダートマス会議」を開催するための提案書のなかで、「AI」という言葉を初めて使用しました(※1)。これ以後、AIという用語は研究者の間などで広まり、世界中で研究が加速していくことになります。
第一次人工知能ブーム ―「推論」と「探索」が可能に
AIの研究は、1950年代から三度のブームを経て、現在に至っているとされています。以下では、その三度のブームについて、解説していきます。
第一次人工知能ブームは、1950年代後半から1960年代にかけて到来しました。この頃、コンピュータを使用した推論(既知の情報から未知の事柄を推し量って、答えにたどり着くアルゴリズム)や探索(迷路を探索するように、場合分けを行いながら、目的に到達するアルゴリズム)が技術的に可能になりました。これにより、迷路の解き方など、単純な問題であればコンピュータが自ら解答を導き出せるようになります。そうしたなかで、人々のAIへの期待は高まり、第一次人工知能ブームが巻き起こりました。例えば、現在のAI技術の基礎となる計算モデルが多数考案されました。ニューラルネットワークやディープラーニングの考案もこの頃になります。
しかし、研究が進むうちに、当時の技術では単純な問題は解決できても、さまざまな要因が絡み合った社会的な課題は解決できないことが判明しました。これにより、当時の人々のAIに対する興味は次第に失われていくことになります。
第二次人工知能ブーム ― 日本でもAI研究が活発化
第二次人工知能ブームは、1980年代に起こります。この頃、情報技術の高まりにより、AIに知識(推論の前提となる情報をコンピュータに認識できる形で記述したもの)を与えることが可能になり、AIは実用可能な水準まで進化しました。また、この当時、日本でもAI研究が盛り上がりを見せており、通商産業省(現・経済産業省)の所管により「第五世代コンピュータ計画」という国家プロジェクトも推進されています。
しかし、当時はまだコンピュータに与える知識を、すべて人間が記述しなければいけなかったため、活用できる情報量には限界がありました。こうした理由により、1995年頃には再度ブームが下火になっていきます。日本における第五世代コンピュータ計画も、11年間で約540億円が投じられますが、平成4年度を持って終了しています。(※2)
第三次人工知能ブーム ― ディープラーニングの登場
第三次人工知能ブームは、2000年代に起こります。この第三次人工知能ブームの立役者となったのが「ビッグデータ」です。ビッグデータの登場により、従来は困難だった膨大なデータの収集や管理が可能になります。
これにより、推論の前提となる知識を人間が記述する必要がなくなり、AI研究は再度盛り上がりを見せます。第三次人工知能ブームにおいては、AIが自ら知識を獲得する機械学習の技術が実用化。さらに、計算削減法の提唱やハードウェアの進歩などにより、AIが自動的にデータの特徴を抽出するディープラーニングの技術も実用可能となりました。
こうした動きのなかで、AIは多く人の関心を集めるようになり、メディアなどでもAIに関する話題が頻繁に取り沙汰されるようになりました。また、スマートスピーカーやOCR(光学文字認識)など、AIを搭載した製品やサービスが私たちの生活に身近なものになってきたのも、第三次人工知能ブームの時期にあたります。
一部調査によれば、日本における2020年度のAI主要8市場(画像認識、音声認識、音声合成、テキスト・マイニング/ナレッジ活用、翻訳、検索・探索、時系列データ分析および機械学習プラットフォーム)の市場規模は約513億円と言われています。例年、右肩上がりの成長を見せており、2025年度には1200億円もの市場規模に達すると予測されています(※3)。2000年代から続く第三次人工知能ブームは、まだまだ収束の気配を見せていないようです。
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Society 5.0の中核的技術と位置付けられるAI
三度のブームを経て、時代とともに進化を続けて来たAI。その歴史を振り返ると、急速な進歩の度合いに驚かされることでしょう。現在、政府が掲げる「Society 5.0」では、AIはビッグデータが収集されるサイバー空間と、私たちが生活する物理的な空間を結びつけ、新たな価値を生み出す技術として、活用が期待されています(※4)。今後、ますますAIは進化を続け、私たちの生活にさらなる利便性を提供してくれるに違いありません。そうした意味では、AIの未来について知ることこそ、私たちの未来を知ることと言えるのかもしれません。
生成AIが世界に与えたインパクトとこれから →
参考:
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