政府・経団連など発表「書面・押印・対面」削減への共同宣言を読み解く
日本経団連や内閣府などが連名で、ビジネス様式のデジタル化により「書面、押印、対面」作業の削減を推進していく旨の宣言を発表しました。新型コロナウイルス感染防止の取り組みが長期化の様相を呈する中、企業はどのような変革を進めていけばいいのでしょうか。宣言の内容を読み解きながら、業務のデジタル化の変遷をみてみましょう。
2020年7月、日本経団連や内閣府などが連名で、ビジネス様式のデジタル化を推進していく旨の宣言を発表しました。今回は、こうした宣言の内容を読み解きながら、業務のデジタル化の変遷をみていくことにしましょう。
求められるビジネス様式のデジタル化
宣言内では「ビジネス様式」という言葉が用いられていますが、これは簡単に言うと、契約書をはじめとするビジネス文書などについて、紙資料や捺印、対面でのコミュニケーションを原則とする、アナログ主体の商習慣を指すものと言えるでしょう。
今回の宣言が出された背景には、以下の文言からも分かるように新型コロナウイルス感染症の影響があります。
宣言中には、「新型コロナウイルスの感染拡大には、(中略)引き続き、防止及び予防のため、新しい生活様式への移行が求められる状況にある。このような状況において、新型コロナウイルスへの対応として(中略)新しい生活様式・ビジネス様式を拡大・定着させ、社会全体のデジタル化を一気呵成に実現する必要がある」とあります。
もっとも、こうしたビジネス様式の変更が必要な状況は、実はコロナウイルスが蔓延する以前からあったと言うべきです。
例えば、「経済産業省のデジタルトランスフォーメーションについて」は2019年7月に経済産業省が発表したものであり、電子申請をはじめとした手続きの効率化の構想が示されています。このように、政府主体となって契約実務のデジタル化を推進していく流れはもともと存在し、業務の効率化・生産性向上の観点から、規制緩和の必要性は繰り返し指摘されてきたものといえるでしょう。
こうした大きなトレンドがあった中、今回のパンデミックは、
ビジネス様式のデジタル化が強く推奨される場面を増やし、単なる選択肢のひとつといった位置付けにとどまらないものにした
段階的な規制緩和ではなく、スピード感をもった改革の必要性を急激に高めた
といった変化をもたらしました。
宣言冒頭でも、
「このような取組は、これから迎えるデジタル時代において、一層の生産性向上と経済活性化を図るために極めて重要なものである」といったように、感染症対策の先を見据えた目標が指摘されています。
またほかにも、「社会全体のデジタル化を一気呵成に実現する必要」、「時代の要請に即した行政手続・ビジネス様式を速やかに再構築すべき」といったように、対応スピードの重要性に言及した内容が盛り込まれています。
共同宣言のポイントと注意点
宣言の内容を詳しく読み解くためのポイントや注意点となるのは、次のような点でしょう。
全文2章、「民民間の取引における見直しについて」では、企業間での商習慣についての改革の方針が示されています。同章(2)では、押印文化についての考え方が示されていますが、ここに登場する「押印についてのQ&Aとは」とは、2020年6月に内閣府・法務省・経済産業省などが発表した資料を指します。
同資料は、契約書への押印がもたらす法的効力についての官庁の見解を示したものです。今後の押印文化の改革では、こうした内容を原則としながら不要な捺印は廃止する方向で進められていくというのが全体の内容となります。
電子署名や電子契約の位置付けは?
宣言内では「押印が必要な場合においても、書面の電子化のためには電子署名等の電子認証の活用が有意義である」と述べられており、電子署名や電子契約の技術の有用性にも触れられています。
これを踏まえて後段では、「政府がクラウド技術を活用した電子認証サービスの電子署名法における位置づけを明確化」することや、「電子署名等の電子認証の周知、活用が図られるよう取組む」ことなど、普及にむけて政府が果たしていくべき役割についても説明されています。
規制が多かった分野として特に意識されているのは?
2章の「(4)特定分野等における規制・見直し」では、特にビジネス様式の改革がこれまで困難となりがちだった業界・業務領域が指摘されています。
具体的には、
不動産関係(重要事項説明書の書面交付等)
金融関係(顧客と金融機関間の手続の書面・押印等)
会社法等一般法関係等について
などが指摘されています。
事実こうした領域のなかには、法的な規制が理由となってペーパーレス化が進めにくいものや、リモートワークで関連手続きを行うことが難しくなっていたものもまだまだ多いのが実情です。
今回の宣言は、改革の全体的な方向性を示すものです。そのため、規制緩和の方向性についても、現段階では「課題の洗い出し及び解決に向けた取組を行う」「デジタル化を阻害する法令や慣行等の見直しに向け、取組を継続する」といったような抽象的な表現もまだ多く見られます。
しかし、今後は規制緩和にむけた取り組みが加速していくことも考えられるため、さらなる状況の変化を引き続き見守っていく必要があると言えるでしょう。
まとめ
ビジネス様式の急激な見直しが求められ、日々の業務も慌ただしくなりがちな今日です。しかしこうした急激な見直しの背景には、ビジネス様式のデジタル化という大きなトレンドが従来よりあったことも確かです。
取り組みを進める際には、感染症への緊急対応だけでなく、業務の改善・効率化といった大局的な目標も意識しておきたいものです。
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